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岳 -ガク-
映画「岳 -ガク-」(2011年/日本)を観ました。原作は、石塚真一の漫画『岳』(2003年〜)。監督は、片山修。 長野県警山岳遭難救助隊の人々が山岳救助に携わる様子を描いています。主人公の島崎三歩(小栗旬)は、山岳救助ボランティア。北アルプスの山頂に住んでいるという筋金入りの山男です。新人女性隊員の椎名久美(長澤まさみ)が新たに配属されます。 事故死を見せるなど登山の厳しさを盛り込んでいます。遺体を回収するために谷下に投げたりびっくりするような行動もあります。片足を切断するシーンなどは、見ていて「イー」となりました。いくつかセットやCGを使用しているようですが、「劔岳 点の記」(木村大作監督)と比べてもあまり見劣りしません。冒頭は遭難する青年(尾上寛之)が急斜面を登ります。吹雪のシーンもよくできています。山頂のシーンは奥穂高岳を3日間かけて登頂したとのこと。なお、セリフに山岳用語が出てきますが、知らなくてもストーリーの理解には問題ありません。 島崎三歩役の小栗旬は、底抜けに明るいキャラクターで好青年。高所恐怖症らしいですが、よく克服できたものです。椎名久美役の長澤まさみは健闘。短髪にして臨んだようですが、少し太ったようです。野田正人役の佐々木蔵之介は、隊長として二重遭難を避ける判断を下します。 音楽は佐藤直紀。大河ドラマ「龍馬伝」のオープニングのようにスケールが大きい。山を俯瞰するシーンなどにはぴったりです。 『シナリオ』誌(2011年6月号)に、吉田智子の脚本が掲載されています。インタビュー記事「女性目線で書いた山岳映画シナリオ」は一読の価値あり。脚本家の立場から見た映画制作について舞台裏が明かされていて興味深い。「劔岳 点の記」とは違うエンターテイメントであることを意識して書いたこと、「序・破・急」の展開になるように後半は原作にないエピソードを入れたこと、遺体に蝿が集まるシーンなどはエグいのでカットされたこと、コンドームのネタはオリジナルで入れたこと、を語っています。 シナリオはいくつかのシーンが追加されたり削除されたりしています。
阪急電車 片道15分の奇跡
映画「阪急電車 片道15分の奇跡」(2011年/日本)を観ました。原作は、有川浩著『阪急電車』(2008年)。女性です。監督は三宅喜重。これまで関西テレビでドラマの演出を手掛けていたようでが、今作が映画デビュー作です。脚本は岡田惠和。 私は阪急京都線の沿線に住んでいるので、気になっていました。阪急の駅でもポスター貼ったり情報誌で特集を組んだりして大々的に宣伝されました。 阪急今津線(宝塚駅〜西宮北口駅 8駅15分)が舞台。車内や途中下車したホームで起こった沿線住民の一日の出来事を描いています。構成は、往路(10月)と復路(3月)。冒頭にまず登場人物が紹介されます。名前と住所(●●駅徒歩●分)が字幕で出ます。ストーリーや構成はほとんど原作と同じです。実際のところはオバタリアンの集団はあんなに乗ってないでしょう。 高瀬翔子役の中谷美紀はウェディングドレスを着ているだけで絵になります。萩原時江役の宮本信子は関西弁が板についています。伊藤康江役の南果歩は弱気なキャラクターがよく出ています。権田原美帆役の谷村美月は少し太りましたね。門田悦子役の有村架純は映画初出演とのことですがかわいい。カツヤ役の小柳友は、森岡ミサ(戸田恵梨香)を殴るなど暴力的で怖い。 通常に電車が運転される合間を縫って撮影が行われたようで大変だったようです。撮影用に臨時電車も運行されたとのこと。また、平井車庫ではグリーンバックで撮影が行われ、走行中に見せるためにスタッフが人力で車体を揺らしたとのことです。撮影は冬に行われたようで、半袖などの衣装が寒かったようです。空撮や前景などの映像や、車内放送やホームアナウンスなども入っているので、鉄道ファンでも楽しめるでしょう。小林駅は「おばやし」駅と読むんですね。 ロケ地では、冒頭で中谷美紀が別れを切り出されるカフェが印象に残ります。三宮駅の近くにある「カフェ フロインドリーブ」で、登録文化財とのこと。一度行ってみたい。関西学院大学は、原作では「関西の有名私立大」と書かれているだけですが、映画ではロゴマークが映ったり、正門がロケ地で使用されたり、ものすごくいい宣伝になっています。映画でも「特別協力」とクレジットされています。 ちなみに、駅のホームにある看板広告は映画用に製作されたとのこと。門戸厄神駅のシーンなどかなり目立っていますが、実在しないようです。 主題歌はaiko「ホーム」。音楽は吉俣良。 原作は、往路復路ともに土曜日の午後を描いているような記述があります。翔子は映画では西宮北口に住んでいる設定でしたが、原作では茨木に住んでいる設定です。圭一が発見する「真っ赤な鳥居」は、西宮北口駅の屋上に建っているようです。 スピンオフドラマとして、原作に書かれているが映画には登場しなかった征志とユキがLISMOドラマ「阪急電車 片道15分の奇跡 征志とユキの物語」としてauの携帯電話で配信されました。4月1日から全5話。監督は宮崎暁夫、監督監修として三宅喜重、脚本は渡辺千穂。 征志役を永井大、ユキ役を白石美帆が演じます。永井大のナレーションで進行します。撮影時期に合わせて、ドラマも冬の設定です。原作どおり、宝塚市立中央図書館で撮影されたようです。武庫川の中洲に石積みで作られた「生」の字も映っています。原作では明らかにされていない「好きな作家の新刊」のタイトルは、ドラマではイーサン・マクスウェル著『報復の行方』が映っています。実在しない書籍のようです。
八日目の蝉
映画「八日目の蝉」(2011年/日本)を観ました。原作は、角田光代著『八日目の蝉』(2007年)。監督は、成島出。日本アカデミー賞が狙えるほど、どっしりとした観ごたえのある作品です。 愛人との子供を中絶させた野々宮希和子(永作博美)が、本妻の秋山恵理子(森口瑤子)との生後4ヶ月の子供(恵理菜=薫)を誘拐して、4年間育てるストーリーです。冒頭は秋山恵津子と野々宮希和子がそれぞれ1人でカメラに語りかけます。声だけが聴こえて、黒い画面から徐々に顔が浮かび上がる静謐な雰囲気で始まります。 奥寺佐渡子の脚本がすばらしくよくできています。21歳になった現在の恵理菜と希和子と過ごした過去の回想シーンが頻繁に挿入されます。原作は後述するように時系列にそって書かれているので、原作を再構成してシナリオが作られています。まさにシナリオの醍醐味と言えるでしょう(詳細は後述)。原作にはない小豆島の創麺屋のその後を描いている点が秀逸。写真館の暗室で写真が浮かび上がるシーンは熱いものがこみ上げてきます。ラストシーンは映画オリジナルのためか、意外にあっさり終わります。原作に描かれている、希和子が今どうしているのかにあえて触れなかったのも正解。 秋山恵理菜役の井上真央は初めて観ましたが、目力がある演技ですばらしい。野々宮希和子役の永作博美は、出産を経てちょっと老けた感じです。犯罪者の役ですが、あまり悪く思えないのが困ったところです。情熱を持って、優しく子育てします。自分で髪を切って短髪になるシーンがあります。ちなみに、井上と永作は映画中では一度も顔を合わせません。薫(子役)の渡邉このみも大健闘。演技初経験とは思えません。安藤千草役の小池栄子は、セリフが早口。もう少し間を開けて話して欲しいです。沢田久美(エステル)役の市川実和子は、冷静ですが思いやりを感じます。秋山恵津子役の森口瑤子は終始ヒステリック。エンゼル役の余貴美子はまさにハマり役。タキ写真館・滝役の田中泯も寡黙で最高。 小豆島の風景がきれい。ふたたび訪れたときは廃墟になっているなど、時間の経過がうまく表現されています。美術さんに拍手。展望台のロケ地は瀬戸内海国立公園の寒霞渓(かんかけい)。ロープウェイに乗ってぜひ行ってみたいです。エンジェルホームは、長野県諏訪郡にある富士見町立南中学校(廃校)。タキ写真館は、栃木県足利市にある松村写真館。明治26年創業で、赤いイスからして雰囲気満点です。 音楽はあまり使われませんが、瀬戸内海を渡る船のシーンで流れる洋楽が印象的。ビーチ・ハウス(Beach House)の「Zebra」(2010年)。昔の曲かと思いましたが、最近の曲でした。妙に懐かしさを覚える曲です。原作にはない「見上げてごらん夜の星を」も心に染み入ります。 『シナリオ』誌(2011年5月号)に脚本が掲載されています。文字で読むと、ストーリー設定がより詳しく分かります。シーンの後に(●年●月)と括弧書きで時系列が書かれているのが特徴。所有物をエンジェル・ホームに委託する契約書にサインするシーンなど、映画ではカットされたシーンもあります。「居酒屋『はなの舞』」など、実際のロケ地がシナリオに書かれているのも面白い。幼い恵理菜が寝ているのはシナリオでは2階ですが、映画では1階の奥の部屋に変更されています。タキ写真館はシナリオでは音楽が流れていますが、映画では静かでした。また、撮影スタジオはシナリオでは2階にありますが、映画では1階でした。
八日目の蝉(続き)
原作は、「0章」「1章」「2章」の3章からなります。0章では私(=希和子)が幼い薫を奪うシーン、1章は「●月●日」のように希和子が記した日記の形態で書かれています。「2章」は「私」が大学生になった恵理菜に変わります。恵理菜と千草が小豆島に上陸したところで終わります。2章の最後で、出所後の希和子が岡山港のフェリー乗り場の待合室で恵理菜とすれ違います。 原作では恵理菜に1つ違いの妹真里菜がいるのが大きな違いです。また、希和子が名古屋の立ち退き地域に住んでいる中村とみ子の家に身を寄せたことや、小豆島に来て最初にラブホテルに住み込みで働いたこと、秋山丈博と希和子の出会いなど、シナリオには盛り込まれていないエピソードもあります。 原作ではエンジェルホームは存続しています。奈良県生駒市にあること、エンゼルさんの本名は長谷川ナオミで有罪判決を受けたこと、ナオミとルツの名前は旧約聖書のルツ記から引用されたことなどが記されています。 ・原作では秋山家が希和子が侵入した後に火災になりますが、シナリオでは描かれているのは誘拐事件のみです。 ・希和子が髪を切るのは原作では美容院ですが、シナリオでは公衆トイレの個室です。自分で切るシナリオのほうが犯罪臭があります。 ・原作では沢田久美(エステル)は希和子と同じタイミングでエンジェルホームにやって来ますが、シナリオでは久美が希和子を連れてきます。 ・原作では恵理菜はタバコを吸う設定になっていますが、映画では喫煙シーンはありません。 ・原作では希和子が現在は岡山でビジネスホテルの清掃係として働いているなど、出所後の生活に触れています。原作では希和子はタキ写真館の写真を取りに行っていない設定です。
さや侍
映画「さや侍」(2011年/日本)の完成披露試写会(5月7日(土))に行きました。MOVIXのモバイルサイトから申し込んだところ、めでたく当選しました。監督・脚本・企画は、松本人志。「大日本人」(2007年)、「しんぼる」(2009年)に続く、監督第3作です。脚本協力として、高須光聖、板尾創路ほか3名がクレジットされています。 会場は、大阪ステーションシティシネマ。5月4日に開業したばかりです。スクリーン1(502席)で行われました。 16:30に開映。まずは本編の上映。母を亡くしたことで刀を使わなくなり鞘しか持たない侍(=さや侍)の野見勘十郎(野見隆明)が主人公。「三十日の業(ぎょう)」で殿の若君を笑わせることができなければ、切腹させられます。娘のたえ(熊田聖亜)に責められながら、見張り役の門番の倉之助(板尾創路)と平吉(柄本時生)に笑いのネタや指導を受けながら、毎日笑わせようと努力します。「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」の「笑ってはいけないシリーズ」とは逆の発想です。 30日目に辞世の句を詠むことなく、切腹するのが意外でした。刀を鞘に収めたかったのでしょう。死後に読まれるにたえに宛てた手紙は、途中から歌になります。最後に、現在の野見の墓が映るのも巧い演出です。 冒頭の三味線のお竜(りょう)、二丁短銃のパキュン(ROLLY)、骨殺師ゴリゴリ(腹筋善之助)の登場シーンはやや異色。野見が斬られたり打たれたりして血が噴出する様子をスローで映します。「あー」と大声を上げますが、倒れません。野見は54歳で未婚。最初のほうはほとんどセリフがありません。野見はめがねをかけていますが、時代考証からすれば、この時代にまだめがねはなかったと思われます。骨殺師ゴリゴリは「どういうことだよ」を繰り返し話します。多幸藩の家老(伊武雅刀)の「切腹を申しつける」も何回も出てきておもしろい。変わり者のお殿様役の國村準も、野見に対する感情の変化をうまく表現しています。 撮影は時代劇のセットです。人間花火(24日目)など大掛かりなセットもあります。人間大砲(20日目)やからくり暴れ馬(21日目)などは「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」で、岡本昭彦元マネージャーやヘイポー(=斉藤敏豪)が挑戦しています。ちなみに、岡本昭彦は本作のプロデューサーを務めています。 音楽は清水靖晃。前作の「しんぼる」でも音楽を担当していました。今作では古風な雰囲気の音楽がオーケストラで演奏されます。 「大日本人」「しんぼる」に比べると、今作の完成度は高い。また、ストーリーも分かりやすいので、一般受けするでしょう。 一般公開は6月11日から。前売券では一般(1300円)の他に、親子券(2000円)を設定しています。親子そろって観て欲しいということでしょう。 公開に合わせて、パンフレットを購入しました。「大日本人」「しんぼる」と同様、封筒に入っています。2010年5月から企画会議が始まり、撮影は2010年10月から2011年1月まで行なわれたようです。当初は板尾創路は、お殿様で構想されていたようですが、自ら希望して見張り人役になったようです。 松本は「前2作が抽象画だとすると、今回は風景画」と語っています。
さや侍(舞台挨拶)
上映終了後に舞台挨拶。大勢のカメラマンや記者が入場しました。司会のフリーアナウンサーの中田有紀が舞台に登場。松本人志とは「考えるヒト」で共演しています。きれいな人ですね。今日が作品初披露で初めての舞台挨拶となることを紹介。 そして、松本人志、板尾創路、熊田聖亜の3人が舞台に登場しました。松本も板尾もスーツ姿でした。松本が「いつも元気なまっちゃんです」と挨拶。初めて松本人志を生で見ましたが、いつもテレビで見ているような感じの肩肘を張らない雰囲気でした。続けて板尾が「いつもテンションの低い板ちゃんです」と挨拶。熊田は2人と比べると身長の差がすごいですが、しっかりした挨拶をしました。 司会の中田の質問に答える形で進行しました。素人の野見を主役に起用した理由について、松本は「ギャラがない、失敗したときにあいつのせいだと言える」「誰もやってないことがしたかった」「野見さんにはこれが映画の撮影だとは言わなかったので、前半は演技していない。ドキュメントになっている」と話しました。また「大日本人」「しんぼる」とは異なり、出演せず監督に専念したことについては、「実はちょっとだけ出ている」と明かしました。画面の端で立っている托鉢僧ではないかと思っていましたが、パンフレットによると現代の野見の墓を自転車で通り過ぎているとのこと。これは分かりませんでした。板尾の演技については「お芝居うまくなった」。野見隆明については「二度と会いたくない」と言って笑わせました。 板尾は「カツラが蒸れてかゆかった。コーヒーのマドラーを中に入れて頭を掻いていたら、マドラーが折れてしまった。中に入ったまま撮影している」と話しました。熊田は「出演者のみんなに仲良くしてもらった」としっかりした口調で話しました。 「三十日の業で好きなものは」という質問には、板尾は「映せないようなアクシデントもあった。現場では長く回していた」と話しました。松本は「野見さんはまじめだが、電車賃はごまかした」と突っ込み。熊田は「腹踊り」。実際に熊田が絵を描いたようです。よくしゃべります。松本は「うどんすすり。つるんと鼻に入った。野見の評価はしないが」と話しました。エンドクレジットにも「うどんすすり指導 ほっしゃん。」と出たので客席から笑いが起きていました。 大阪ステーションシティシネマの印象については、松本が「4つ角があっていい」と当惑気味にコメント。 「ここでスペシャルゲストの登場」ということで、野見隆明がスーツで登場しました。めがねをかけていました。映画で観たときよりもふっくらしていました。ジェケットのポケットに解約している携帯電話を入れていたようで、松本にいじられていました。三十日の業できつかったのは「ふすま割り。なかなかできなかった」と話しました。松本に「おっさん、あがりすぎ!」と突っ込まれていました。松本は「まじめなので一生懸命やる」と野見の姿勢を評価していました。 松本に「野見さんは腐るほど時間あるんですけどね」と惜しまれながら終了。フォトセッションに入りました。カメラマンが舞台付近に並んで写真撮影。 最後に松本からメッセージ。「今まで作ってきたものとはちょっと違うものになっている。後半はマジで作ってしまいました」と話しました。4人がそろって退場して、舞台挨拶は終了しました。