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月光ノ仮面
映画「月光ノ仮面」(2011年/日本)のトークショー付き先行上映に行きました。監督・脚本・主演は、板尾創路。「板尾創路の脱獄王」(2009年)に続く、監督第2弾作品です。 ストーリーがかなり難しい。男(板尾創路)がつぶやく落語「粗忽長屋(そこつながや)」がストーリーに重要なヒントを与えますが、映画中では説明されません。ある程度知っていないと理解ができないでしょう。パンフレットには、3つのテーマとして、「女は月の魔力に左右される」「穴の中に月の光は届かない」「目は口ほどにものを言う」が挙げられています。 敗戦後の東京に、頭と右目に包帯をした男(板尾創路)が帰還します。夫婦の契りを交わした弥生(石原さとみ)から、戦死したはずの落語家「森乃家うさぎ」だと言われます。男はまったくしゃべらず、健忘症ということにされます。この頃から、男は遊女と協力して遊廓の床下に穴を掘りだします。 その後、岡本太郎(浅野忠信)が帰還。こちらが本物の森乃家うさぎだったことが判明。岡本は男とは同じ戦場にいたので顔見知りですが、のどに爆弾を受けて話せなくなりました。そのため、男を「森乃家うさぎ」として高座に復帰させます。その復帰の高座で散弾銃を乱射。集まった客は笑いながら血まみれになって死にます。岡本も銃弾が命中したにもかかわらず、ラストシーンでは馬車に乗って帰ります。いったいどういうことなのか、多様な解釈ができるラストシーンです。戦争のシーンがあるなど、「板尾創路の脱獄王」よりも製作費はかかっているでしょう。 男役の板尾創路は、「板尾創路の脱獄王」の鈴木雅之役と同じくセリフが少ない。セリフは最後の「ズダダダダン」しかありません。岡本太郎役の浅野忠信はいつも笑顔です。岡本太郎という役名は「ただの思いつき」と板尾がパンフレットで語っています。弥生役の石原さとみは、着物がよく似合います。神社にお参りするシーンが意外でした。森乃家天楽役の前田吟は、いかにも落語家。「板尾創路の脱獄王」にも出演した國村準は席亭役です。ドクター・中松がタイムトラベラーで出演しています。宮迫博之(神楽文鳥)、木村祐一(平尾小隊長)、矢部太郎(森乃家福次郎)など、吉本芸人も出演しています。 BGMは、ベートーヴェン作曲/ピアノ・ソナタ第14番「月光」第1楽章が何回か出てきます。演奏者名はクレジットされていません。ハーモニカによる編曲もあります。銃の乱射シーンは、オルゴールによって、モーツァルト作曲/ピアノ・ソナタ第11番「トルコ行進曲」が流れます。 上映終了後に、トークショー。映画評論家のミルクマン斉藤がピンクのスーツで登場。続いて、板尾創路監督が白のスーツで登場しました。2人は同い年とのこと。 斉藤が「今日は3連ちゃん」と紹介。板尾は「徐々に大阪に近づいていきますね」と話しました。この日はトークショーが京都、枚方、大阪の順に行われました。京都は最初だったので、板尾が「朝から申し訳ない。午前中に観る映画ではない」と話しました。 板尾は「映画はテレビと違う特別感や高級感がある」。戦後の時代設定については、「過去のものをスクリーンで再現したい」と話しました。「粗忽長屋」については、「生きているのか死んでいるのかというテーマとリンクしている。実は一人なのか、二人ともこの世にいないのか、観た人に自由に解釈してほしい」「ボソボソ話しているが、聴かそうと思っているわけではない」。キャスティングについては「あて書きに近い。浅野忠信は観た目よりも醸し出すものが似てるほうがよかった」と話しました。 最後に、観客との質疑応答。ドクター・中松について、「未来の象徴」と説明しました。セリフの少なさについては、「説明っぽいセリフは好きじゃない。セリフは少ない作品が好き。浅野君も似た考え」と話しました。「月光ノ仮面」のタイトルについては、「「ノ」が入っているので、月光仮面の権利上は問題ない。タイトルは撮影中に決めた。いいタイトルだと思っている。ヒーローものではない」と話しました。20分程度でトークショーは終了し、ロビーでサイン会が開催されました。
源氏物語 千年の謎
映画「源氏物語 千年の謎」(2011年/日本)を観ました。原作は、高山由紀子著『源氏物語 千年の謎』(2011年)。監督は、鶴橋康夫。 紫式部(中谷美紀)が執筆した源氏物語を、藤原道長(東山紀之)に説明していくことで進行します。紫式部をめぐる現実世界における藤原氏の繁栄と、光源氏(生田斗真)をめぐる源氏物語のストーリーが交互に現れます。安倍晴明(窪塚洋介)だけが両方の世界を行き来します。構想はユニークですが、もう少し面白い見せ方ができたように感じました。「千年の謎」というタイトルですが、ミステリーの要素はありません。源氏物語は魅力的なコンテンツなので、また映画化してほしいです。 彰子(蓮佛美沙子)に子供を産ませるために、藤原道長の依頼で、紫式部が源氏物語を執筆開始したという設定です。光は藤原道長の幼名とのこと。紫式部は最後は伊勢に帰ります。 音楽やセリフが少なく、ゆっくりしたテンポで流れる静かな作品です。冒頭は紫色の背景に字幕で説明されます。前半は中谷美紀のナレーションで進行します。キスシーンが多い。また、簾越しに会話するシーンが多いです。 光源氏役の生田斗真はたたずまいがいい。紫式部役の中谷美紀は落ち着いた語り口。藤原道長役の東山紀之は若い。六条御息所役の田中麗奈が怖い。夕顔(芦名星)の首を締めます。真木よう子が桐壺更衣と藤壺の二役を演じます。弘徽殿女御役の室井滋も嫉妬が怖い。桐壺帝役の榎木孝明はぴったり。東儀秀樹が一条天皇を演じます。 藤原道長の「土御門邸」は、2億円をかけて琵琶湖畔にオープンセットを建てたとのこと。
聯合艦隊司令長官 山本五十六 ‐太平洋戦争70年目の真実‐
映画「聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-」(2011年/日本)を観ました。監修・原作は、半藤一利(はんどうかずとし)著『聯合艦隊司令長官 山本五十六』(2011年)。半藤は山本五十六と同じ新潟県立長岡中学校(現:新潟県立長岡高等学校)の出身とのこと。監督は、成島出。五十六の長男の山本義正が特別協力としてクレジットされています。 大日本帝国海軍で活躍した山本五十六のことは、ほとんど知りませんでしたが、この映画でよく知ることができます。海軍は日独伊三国軍事同盟の締結に反対していて、軍部を批判する会話も聴かれます。五十六はアメリカとの軍事力の差も認識していました。戦況を的確に分析して、戦争を早期に決着させることで、アメリカと講和を目指そうとします。 真珠湾攻撃では標的としていた空母がいなかったため早く撤退します。また、宣戦布告が遅れたことを知って落胆します。ミッドウェー海戦では南雲忠一(中原丈雄)が指示通り準備しなかったため大惨敗。五十六は戦艦の中で呑気に将棋をしています。部下のミスにも温厚な態度で怒らず、見かけは冷静です。ガダルカナル島の戦いの後、ブーゲンビル島上空で飛行機が撃墜されて墜落死します。 山本五十六役の役所広司は、セリフがないシーンでも感情がよく分かります。墜落死するときに何とも言えないいい表情をします。左手の指が2本なく、一部シーンでCGで表現されます。演技派の俳優が集結しています。香川照之(宗像景清)、玉木宏(真藤利一)、柄本明(米内光政)、坂東三津五郎(堀悌吉)、阿部寛(山口多聞)、伊武雅刀(永野修身)、椎名桔平(黒島亀人)など。読書するなどして役作りをしたようです。 戦闘シーンはほとんどCGとのことですが、よくできています。 パンフレット掲載の写真に、シーンナンバー(例:S#12)が付けられているのが珍しい。
天使突抜六丁目
映画「天使突抜六丁目」(2010年/日本)を観ました。監督は山田雅史。「堀川中立売」に続く、「京都連続」第2弾作品です。 天使突抜(てんしつきぬけ)は、京都市下京区にある地名です。すごい地名ですが、1丁目から4丁目までは堀川五条付近に実在します。天使突抜六丁目はないので、架空の設定です。 会社が倒産して逃げ出してきた五十嵐昇(真鍋拓)と背中に天使の羽根が生えるみゆき(瀬戸夏実)が主人公。昇がたどり着いた町が天使突抜六丁目だったという設定ですが、地名そのものはストーリーに関係がありません。京都を舞台にしなくても、ストーリーは成立するでしょう。 ストーリーは分かりやすく、CGもあまり使っていません。「堀川中立売」よりは良心的で評価できます。後半に昇が人形に置き換わります。化石になったのかと思いましたが、パンフレットに掲載されている脚本には「昇(ロボット)」と書かれています。 撮影は天使突抜でも一部行われていますが、ほとんどは舞鶴で行われています。ただし、登場人物が夏なのに汗をかかないのが不自然。 俳優の演技はいい。五十嵐昇役の真鍋拓は、映画初出演で初主演。杉本役の柄本明が頑固な警備員を好演。よく出演してくれたものです。みゆき役の瀬戸夏実、茂子役の蘭妖子も怪しい存在感があります。 渡邊崇の音楽は、旋律がなく断片的。「ハラがコレなんで」とは雰囲気がまったく異なりますが、印象に残ります。 エンドクレジットは上から下に文字が流れるのも個性的。 来場記念で「赤鬼キャンディ(麿飴)」が配られました。赤鬼役の麿赤兒の顔がデザインされた金太郎飴です。
グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独
映画「グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独(原題:Genius Within:The Inner Life of Glenn Gould)」(2009年/カナダ)を観ました。監督は、ミシェル・オゼ、ピーター・レイモント。上映時間は108分ですが、内容が濃い。 グレン・グールドの映像と、関係者へのインタビューから構成されています。誕生から葬儀まで、グールドの人生が概観できます。グールドの音楽性よりも、私生活に重点を当てているのが特徴です。かなり取材して制作された良質のドキュメンタリー映画で、クラシックファン以外にも勧められます。 作曲家グリーグの縁戚に当たると自己紹介しますが、彼のピアノ協奏曲はあまり好きではないと語ります。アルベルト・グレーロに教えられた演奏法「フィンガー・タッピング」について触れられます。ウラディーミル・アシュケナージが、グールドのデビュー当時のソ連の状況を語ります。いい声です。レナード・バーンスタインの有名な演奏前スピーチ(ブラームス「ピアノ協奏曲第1番」)も聞けます。 特筆すべきは、グールドの女性関係。人妻コーネリア・フォスと2人の子供(クリストファーとエリザ)、元恋人のフランシス・バロー、ソプラノ歌手ロクソラーナ・ロスラックが、グールドとの関係を語ります。グールドはクールな印象でしたが、私生活は波瀾万丈だったようです。父親の再婚となる結婚式に行かなかったこと、晩年は抗鬱剤を飲みすぎていたことなどが関係者によって語られます。 その他にも貴重な映像が満載。低い椅子を「family」と表現したり、ニューヨークではなくトロントに住み続けている理由についてインタビューを受けたり、演奏会活動をやめてから興味を持ったラジオ放送番組の制作でスタッフに細かい指示を与えたり。貴重な映像がよく残っていましたね。演奏会やスタジオ録音の映像や、遺された自筆メモ、初公開の写真もあります。言うまでもなく、BGMはグールドの演奏です。 パンフレットに掲載されている宮澤淳一の「グレン・グールド フォローアップ この映画を観た人のために」は一読の価値があります。
カイジ2 人生奪回ゲーム
映画「カイジ2 人生奪回ゲーム」(2011年/日本)を観ました。原作は、福本伸行の漫画『カイジ』(1996年〜)。なかでも『賭博破戒録カイジ』(2000年〜2004年)をベースにしています。福本は今作の脚本にも携わっています。監督は佐藤東弥。佐藤純彌の息子です。 「カイジ 人生逆転ゲーム」(2009年)の続編です。前作の「ブレイブ・メン・ロード」などのシーンが断片的に出てきます。前作は観ていませんが、人間関係やストーリーはだいたい理解できました。 今作は、帝愛(てあい)グループが経営する裏カジノが主な舞台。「沼」と呼ばれる高レートパチンコ台の大当たりの穴に入れるために、伊藤カイジ(藤原竜也)たち4人が借金までして協力します。坂崎孝太郎(生瀬勝久)は模型を作って攻略法を練ります。一条聖也(伊勢谷友介)は床を傾けたり空気で防いだりして対抗します。 ストーリーは単純なので、役者の演技を楽しむ映画です。金よりも友情の重要性を説いています。裏カジノの建物の古い外観が印象に残りますが、どこで撮影されたのでしょうか。 伊藤カイジ役の藤原竜也は、安心して見れます。一条聖也役の伊勢谷友介は、「沼」の状況に対する感情の起伏が笑えます。スター性があってかっこいい。石田裕美役の吉高由里子は、勝てそうなほうにベットする冷静な性格。メイド服姿が見られます。坂崎孝太郎役の生瀬勝久はオールバックの関西弁。利根川幸雄役の香川照之は裏表がある人物。「姫と奴隷」ゲームでヒントを与えますが、最後の「Eカード」でいかさまをします。黒崎義裕役は嶋田久作はいかにも悪役ですが、滑舌が悪い。 音楽は菅野祐悟。エンドクレジットで流れる「END TITLE 2 〜絶対に諦めるな!〜」がいい。
指輪をはめたい
映画「指輪をはめたい」(2011年/日本)を観ました。原作は、伊藤たかみ著『指輪をはめたい』(2003年)。監督・脚本は、岩田ユキ。 スケートで頭を打って記憶喪失(健忘症)になった片山輝彦(山田孝之)が、婚約指輪を誰のために買ったのか解明していくストーリーです。4人の女性が登場します。後述するように、原作の設定を変えていますが、映画らしい脚本になっています。ただし、編集が凝りすぎで、ストーリーの流れが理解しにくいのが残念。 片山輝彦役の山田孝之は頭に包帯を巻いています。まじめで共感できるキャラクターです。誕生日の設定が12月15日で、私と同じでした。住友智恵役の小西真奈美は、白衣がよく似合います。潮崎めぐみ役の真木よう子は胸が大きい。風俗嬢の役柄で、「モテキ」とはキャラクターが大違いです。鈴木和歌子役の池脇千鶴は、服装が個性的。言葉使いがとても丁寧。 しかし、最も印象に残るのは、エミ役の二階堂ふみ。ヒロインの3人以上に存在感があります。すっかりファンになってしまいました。スケートもうまい。スケート監修の村主千香は村主章枝の妹とのこと。 音楽は加羽沢美濃。ヨハン・シュトラウスのワルツのような音楽です。 原作は、片山輝彦を「僕」の一人称で書かれています。原作と映画では、登場人物の職業が異なります。片山輝彦は原作では編集者ですが、映画では製薬会社の営業に変更されています。同様に、住友智恵はゲーム好きの後輩から会社の先輩に変更、潮崎めぐみは某ハム会社の広報から風俗嬢に変更、鈴木和歌子は損保会社に務める大学時代の同級生から人形劇パフォーマーに変更されています。いずれも映画のキャストのイメージに合わせたのでしょう。原作ではセックスシーンが書かれていますが、映画では一切ありません。また、原作では絵美里は同い年の同棲していた元恋人、笑(エミ)はスケートリンクに現れる中学生として書かれて、二人はよく似ているという設定です。 原作は結末が謎めいています。片山がもう一度頭を打ち、目が覚めたときは最初に頭を打った2週間前に戻り、絵美里の携帯電話番号を覚えています。また、救急車を運転している隊員が笑に似ています。婚約者探しはすべては夢だったと解釈できます。最後のパラグラフで「過去にも現在にも、そして未来にも所属できずにいる男」「マンモスのように氷漬けになった男」と「僕」を形容していて、ヒントが隠されているようです。