コンセプチュアルなのに詩的、社会批判なのに楽しい、一味違う現代アートを作る坂田英三のパリ便り

パリに住んでもう二十余年。版画からはじめた制作活動だったが、田舎でのランドアート的作品から、水をあつかうエコロジカルな企画へと範囲は広がるばかり。フランス超田舎の旅行記だったり、パリの展覧会報告だったり、フランス社会批判だったり、制作=生活の現場を気のままに書き綴ります。

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2012年2月29日(水)

言語文明学院

何かに触れて書いているとは思うのだが、、、私のアトリエの目の前に言語文明学院なるものが建設され10月に開校した(学院と書いたが仏語ではPôleで、この単語はおそらく昔はセンターであったところに数年前から流行のように使われる)。とはいえこの建物はINALCO(東洋言語文明学院)とBULAC(言語文明大学図書館)からなり、学研の場だから学院でいいだろう。
これは私の界隈に革命的変化を及ぼしつつある。例えば閑古鳥が鳴いていた一番近くのパン屋さんは、改装して軽食用スペースまで作り、お昼に行くと学生が列をなして、困ったことにパン1つ買うのに大変な時間がかかるようになった。つまりお店は大繁盛。アルジェリア出身の店主さんだから休日は金曜日(イスラム教徒の集団礼拝の日)だったのに、土曜日に変わってしまった! その隣には地下でコンサートをするようなレストランもできた。まあともかく地区が一挙に若返った。
夜など地下鉄の駅からから戻ってくると、学院が通り沿いなので、図書館や講堂で屋内が煌煌として明かり出され、大勢の若者たちが真剣に勉強している見られる。これには少し現代の若者のイメージが変えられ、何となく「人類まだなんとかなるのかなー」との希望を抱いてしまう。

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2012年2月26日(日)

近況

寒波が過ぎではや1週間。アトリエの温度計は14度からゆっくり上昇し、17度まで戻ったが、以前より暖かいどころか寒さを感じるのは湿度の為。厳寒の青空とはうってかわり連日霧雨でアトリエの湿度は50%を超えている(これも100円温度計だからあてにならないが、一応動いている)。
最近なかなかブログに手が回らないのは、毎日フェースブックに掲載することにしたドローイング(描くのに集中する時間は短いかが、それに至る準備時間もいる)、そしてこれで4月に展覧会をすることになったのでその雑用(事務手続き?)、および来るイスタンブールでのキス集めの雑用などなど、、、 インスタレーションの仕事も落選ばかりもしゃくなので、昨日は(場所に興味があったので)一つ企画をでっちあげてしまったし、毎日が不思議に忙しい。

その間にフランスでは何が起きたかというと、サルコジが正式に立候補して、毎日が白熱の選挙戦(どの候補が何処へ行ったとか何を言ったとかが大事件のごとく報道される)となった。ちょっとびっくりしたのはサルコジがスポークスマンに10月19日に紹介したナタリー・コシゥスコ=モリゼを選んだこと(だから彼女は環境大臣を辞任)。「私の観察が鋭かった」と自慢したいところだが、彼女は典型的な右派でないのでこの抜擢はサルコジ陣営では不満が多いらしく、急に何人ものスポークスマン補佐官が任命された。つまり2月6日に書いたように、今回のサルコジは前回のような、オーソドックスでないことをプラスにアピールしきるパワーに欠けている。これならトッチャン坊や(10/17参考)でもこのまま苦もなく押し出しで勝ちそうな雰囲気だが、、、

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2012年2月12日(日)

寒波の時間差攻撃

最近のTVのニュースは20分ぐらいは寒波のことばかりで、シリアもギリシャも二の次三の次。急に世界が平和になった錯覚に陥る(勿論寒波で大変な状況にある人たちの報道もあるが、、、)。その平和な報道の中で印象深かった最たるものを紹介すると:

その1、パリの築地、卸売り市場のランジス、朝早くから働く労働者が大型冷蔵庫で暖をとっていた。

その2、仏西部のミュルーズで橋の上から凍結する川に投身自殺。氷が割れずケガをした男性は、救助員に「家ではガスをだしっぱなしだ」と言って第二の災害を防いだ?

加えて朝のニュースで、パリスタジアムで昨晩9時試合開始予定だった仏対アイルランドのラグビーが芝生が凍っている場所もあって危険とのことで試合開始5分前に急遽中止になったことを知りびっくり。カバーをかけて暖気を送り込むみたいなことをし続けていたのだが、最後のレフリー判断! 零下7度にも関わらず集まった8万人の観客(アイルランドファンはもとより、ラグビーは仏南西部で人気のあるスポーツなのでわざわざ上京した人が大多数)は突然のキャンセルにカンカン。この試合には人気取りにサルコジ大統領と社会党オランダ候補の二人が観戦することになっていたが、まさかレフリーがお二人の健康を心配したわけではあるまいし、、、。もっとびっくりしたのは昼のテレビニュースのトップの大々的報道が、某歌姫が亡くなったことだったこと。ますます世界が平和に(日曜日ですねー、しかし数日前に亡くなったタピエスは最後にチョロだったけどなー)。

我がアトリエの平和なニュースは、正しいのかどうかわからない100円温度計が金曜から急に1度下がり、アトリエの室温は14度になった。地下熱で保護されていると思ったが、地下温度も時差ぞおいて降下中ということか。この1度の差を実感中ですが、外の寒さを思えば天国。サンマルタンの運河もご覧のように凍っています(撮影昨日)。

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2012年2月8日(水)

夢の中のエイゾウ

Sさんから昨晩電話があり、また貴男の夢を見たと言う。Sさんはアーティスト夫婦の奥さんで、アルプスの企画(09年6月参考)で3週間同じ屋根の下で暮らしたが、それ以来彼女の夢の世界では私は暗示的な役割を果たしている。今回は私は関取と相撲をとっていたそうで、当然ながら私は負け続けなのだが、関取を指差して「侮るなかれ、私の指先に何人の死人がみえることか」と謎めいた台詞を吐いたそうだ。

そしてその私は、今朝5時半に起きた。その理由も夢だが、私の夢はまったく現実的。私には夢の中にパラレルな日常世界があって、その中で多かれ少なかれ私は普通の生活をしている。今日はドキュメントビデオの編集の仕事に雇われ、私はバイトだから音の編集をすることになったのだが、作家のモノローグがひどい訛りで全然わからないのだ。上司(これは大学時代の下宿の先輩だったが、やはり同じ屋根の下に住むと夢の世界では影響力が大きいのか)に相談すると「どうせいくらお金が払われるかわからないから適当にやって」と言われ、困ったところで目が覚めた。怖い夢でもなんでもないのだが、このまま寝直すと同じオフィスに戻ることは明らかなので、そう眠たくもないので起きてしまった。

外を見るとうっすらと白いものが地面を覆っている。しかし暗いし寒いし、何をするか? コーヒー飲んで6時まで待ち、洗濯機を回すことにした。フランスの洗濯機はゆっくりで行程が複雑、水を入れたり止めたり、その度に大きな音をたてるからこんな時間に動かすのは普段なら人迷惑甚だしいが、寒波による電力不足の日々。昨日のグラフをご覧あれ。つまりこれは「良識ある市民の正しい行動!」(というのは言い訳)。今は7時半だが我が洗濯機は時々ゴーゴーと言いながらまだのんびり回っている。

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2012年2月6日(月)

寒波での仏電力事情

今日月曜日の午後7時頃は電力消費のピークを迎え、南仏プロヴァンスでは停電になるかもしれないと危惧されていたが、色々な節電のお陰でそれは免れた(当然外国から電気を輸入中)。しかし何故今日か? それは簡単、月曜で仕事が始まるから。でも何故夜の7時なのかが解せなかった。というのも私の頭では「電力の大量消費者は工場、家庭で節電したってしょうがないではないか」と思っていたのだが、これは大間違えだった。ニュースのよれば電力消費の割合の一番は一般家庭(33%?)、次が市町村自治体等、そして産業は第三番目でしかない(25%?だったか数字はうら覚え)。フランスでは安全性から電気暖房が推奨され(多分原発の余剰発電のせいもある)、例えば私のアトリエのような改築とか新築アパートの暖房はすべて電気。だから大寒波で電力消費が他国に比べ一層急激に増加した。そして私が一番と思い込んでいた産業は、海外移転で大電力消費型の工場の多くは既にフランス国内から姿を消してしまったのであった。

この大寒波で、いつも寒い寒いと嘆いている私のアトリエは大変であろうと心配して下さる方もあるのだが、オイルヒーターをそれほど強くもしていないのに意外に大丈夫で自分でも不思議がっている。当てにならない100円ショップの温度計は18度から15度に下がったが、外気は10度以上は下がっている。ひょっとすると極端な寒さになって地下の強みが発揮されたのかもしれない。
この寒さでまともな住宅に住んでいない人は大変な思いをしている。私のアトリエに簡易ベッドを持ち込めば裕に十数人は泊まれそうなことを思うと世の中に申し訳ないような気がするが、その私のたわいない今の悩みは、また前とは違った「奇怪な音」がし始めたこと。多分寒さの所為でビルのポンプか何かが異常をきたしている。そして名水「カーユの丘の水」(HP参考)の井戸が止められて、私のお茶用の軟水の供給源が断たれてしまった事。この毎日零下の日々、まだ1週間は続く模様。

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サルコジ最後の100日

フランス情報薄の日本人の方に念をおしておくが、サルコジはまだ来る大統領選に立候補していない。彼によれば一刻の猶予もない経済危機にあり、国のため大統領としての職務を最後まで優先。そしてかかげる政策は付加価値税増税とか明らかに人気のない政策。彼自身少し前までは消費を抑制するとして否定的だったのに今になってどうして? 加えて議会を通して実施するとしても大統領選挙後のことになる。国のための真摯な覚悟が最後に国民の心に訴えるという作戦なら私の想像範囲だが、、、(国を間違えたのか?フランスでアピールするとは思えない)

私にとってサルコジほど読めない政治家はいない。5年前は「こんな暴言はいて失速間違いなし」と私が思うことを彼はすべてプラスにした。今回は逆に、マイナスにしかならないと思われる事をして、今のところ世論では(それどころか与党議員の間でも)ちゃんとマイナスになっている。5年前の追い風が向かい風になったというだけのことなのだろうか? 彼自身がオフレコ(のつもり?)で「選挙に負けたら二度と私の名を聞くことはないだろう」と漏らし、外務大臣のジュペは口が滑ったのか、オランド候補とのTV討論会で「貴男がどこまでできるか見ましょう」と条件法ではなく未来法で言ってしまったほど、サルコジ敗戦ムードは色濃くなるばかり。任期最後に不人気の経済の構造改革をしてメルケルに負けたシュナイダーを讃え、サッチャーの映画に感動し、崇拝するナポレオンならぬ去り行く英雄を演じてウォータールーに向かっているとしか思えない。その悲壮さは「サルコジ嫌いの私」をして批判する気を起こさなくするほどだが、政治の世界でそんな人情は通用しませんからね。いったいどうするつもりなのだろう? 私をまたまた絶句させるような企みがあるのか、期待しないでもない。(まさか再選されては困るが)

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2012年2月5日(日)

境界線のパリ

ニュースを見るとパリはすっかり雪につつまれている。当然画面はエッフェル塔。積雪量1センチと言っている。びっくり。というのも我がアトリエ付近は白い粉がまき散らかった程度で、雪化粧なる言葉すら大げさ。昨晩から大西洋岸から雪前線が到来したが、大寒波をもたらす発達したロシア高気圧のため前線の進行は阻止され、今日のフランスは西側は雪、東は晴天と見事に2分された。そして雪前線の境界がちょうどパリのど真ん中を縦断、エッフェル塔は西だが、我が家は東端で雪景色の風情なしで、ただ寒いのみ。

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2012年2月3日(金)

寒波のパリより

急に寒くなって火曜以来最高気温も零下、いつも18度で動かないと思っていた100円ショップで買った室内温度計も15度まで下がっている。
昨日木曜、朝市に行ったらほとんどお店なし。野菜だって凍ってしまう気温ですからね。と僅かに開けていた一店の肉屋のお姉さんは「寒いし客はいないし」とプリプリ。彼女が-10°とか言うので、「私がそんなに寒くない、せいぜい-4°だ」と言ったら一層プリプリ、11時だいうのに切れて品物を片付け始めた。一応ソーセージ売ってくれたけど。少しはねぎらうべきでしたね。

この寒さ、まだ1週間は続くようだが、反面天気はよい。そして私にとって何より嬉しいのは、日に日に目に見えて日照時間が長くなる事。冬はあまり日の射さない地下アトリエなので、12月に「毎日デッサン」を始めた時は、昼前後に描け上げなければあきらめるしかなくなるので、用事があったりすると緊張した。今のように朝ブログを書くなど問題外。(描く時間は短くても精神的にその状態に高めねばならないので) 最近は午後4時頃までは平気だからのんびりその準備ができる。加えて我が審査員(?)のフェースブック会員の好みはまちまちで(1/25参考)、自分の評価とも合致しないので、自分の好みで失敗と烙印を押す事をやめ、毎日掲載のデッサンは許容範囲を広くし、めったに描き直しをしなくなった。こうして余裕のできたところでキャンバスにも挑戦中。

11月までに出していたランドアート系の企画は全て落選通知が来た。ここまでだめだとかえってすっきり、清々する。もう一つ残っているが、これもアイデア提案で完成図をつめていない。素材も行ってから集めるとして指定していないので、これもまた相手の趣旨と合致しないでしょう。
(写真は昨日の池の波打ち際)

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2012年2月2日(木)

余計非難されそうだが、、、

前回私の「役立たず人生」に触れたが、期せずして学生時代の友人がパリに来て。某さんが「坂田君は国立大学で勉強させてもらったのにその恩恵を社会に返さないなんて」と言っていたと伝え聞かされた。私は受験勉強がよくできて「一流大学」の理科系に行き将来を嘱望されていた頃もあるのだが、そんなに頭がよいわけではない。しかしそう言うと「人を馬鹿にしている」と取られる。でも自分で自分の程はよくわかる。私が仮に研究職になったとしたら、それこそ大した研究でもないのをわかりながら予算を取る事に躍起になるしかなかっただろうし、官僚にでもなっていたら小心者の私の事だから長いものに巻かれて嘘の上塗りに貢献していた事だろう。だから「役立たず」になって褒められても良いと思うのだが、よく言えば惜しまれ、悪く言えば誹られる。
惜しんでくださる方は、当然ながら「芸術が社会に役立つ」とはよもや思っていないだろう。私も「役立つ芸術」を否定する。もし役立つとしたら「無用の用」という意味で、効用とか結果とかの尺度を外れたところでだ。
私は歩くのが好きだが、「役立たず人生」は歩く事にも似ている。現代では多くの人が「歩くのは時間の無駄でしかない」と思っているのではないか? きっとそういう人々は、私が公園や森をぶらぶら歩くのは「健康のため」と思っているかもしれないが、決してそうではない。歩く事に目的はない。あるとすれば歩くのが目的。さもなければ、どうせ戻って来なければいけないのだから、出かけない方がよいことになる。目的を持って歩いている人しかいなくなった街はきっと不気味だろう。

幸いにしてぶらぶら歩いているのは私だけではない。
(写真:今日の夕方散歩した、寒波到来で半分凍ったヴァンセンヌの森の池)

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