ここしばらく、ミルトン・フリードマンの『資本主義と自由』(日経BP社)を読んで関心を持った負の所得税との関連で、ベーシック・インカムについて勉強していました。
ベーシック・インカム(以下、BI)とは、子供から老人まですべての個人に一定の額の現金を無条件に給付する制度です。ネット上の主な賛同者の意見はベーシック・インカム研究所の記事(参照)に、BIに関する文献はウラゲツ☆ブログの記事(参照)にまとめられていますので参考にしてください。
BIのなにより特筆すべきメリットは、受給資格の審査が必要ないので、生活保護とは比較にならないほどスムーズかつ広範に生活困窮者を救済することができることです。それに加え、生活保護や失業給付や各種公的年金をBIに一元化することにより、審査等の人件費をはじめ、非常に大規模に行政コストを削減できます(浮いたお金はすべて給付にあてられます)。また、すべての個人が同じ額を受け取るのですから、受給への心理的な抵抗感もまったくなくなるでしょう。
給付される額は論者によってまちまちですが、日本の人口を1億3000万人とすれば、BIを月5万円(年間60万円)給付すると78兆円、月6万円(年間72万円)給付すると約94兆円、月7万円(年間84万円)給付すると約109兆円の予算があれば実現できる計算になります。こうしてみるとあまりに非現実的な額に思えますが、小沢修司先生の試算(参照)や小飼弾さんの試算(参照)などをみる限りでは、月6万円くらいまでなら財源はなんとかなりそうです。
と、ここまで好意的に紹介してきましたが、私はBIには反対です。
理由は大きく2つあります。1つは、BIを導入すれば、たしかにたくさんの生活困窮者を救うことができるとはいえ、収入に非常に高率のBI税が課されることによって、逆に低所得者層を固定化し、どんなに働いても低水準の生活から抜け出せない社会になってしまうおそれがあるからです。のちほど試算しますが、BIが導入されれば、給与の約半分が税金として徴収されることになります。
もう1つは、労働へのインセンティブの問題です。山崎元さんをはじめ、BIに賛成する人の多くは、BIは労働へのインセンティブを阻害するおそれはないと言っていますが、ほんとうにそうでしょうか?
おバカさんが分からないらしいのはこの点。BIは無条件且つ定額なので、所得水準の如何に関わらず「より稼ぐと、より多くのお金を得ることが出来る」。現実的な額(一人月5万円とか)なら、労働意欲を削ぐことはないだろう。「働かなくてもカネを貰える」のは、生活保護も一緒。だが、生活保護は、稼ぎが増えると貰えなくなる。BIの方が労働インセンティブに対して中立。
(ベーシックインカム7つの長所 - 評論家・山崎元の「王様の耳はロバの耳!」)
たしかに、自分の好きな仕事ややりがいのある仕事に就いている人なら、BIがあるからといって仕事を辞めたりはしないでしょう。しかし、だれもやりたがらないつらい仕事に就いている人はそうとは限りません。そして、そうしたつらい仕事に従事する人が減れば、それに依存するモノやサービスの価格は高騰するでしょう。
そのなかには、ごみ収集や屎尿処理のように、私たちの生活に欠かせないものもあります。そうしたサービスへの負担が増えれば、BI支給額に占めるそのための費用の割合もどんどん大きくなり、せっかくBIによって救済されたはずの貧困層の生活がふたたび困窮することにもなりかねません。
以下の記事では、こうしたBIの問題点について、さらに踏み込んで考えてみたいと思います。

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