平岡公彦のボードレール翻訳日記

ボードレール『悪の華[1857年版]』(文芸社刊)の訳者平岡公彦のブログ
退屈について語りあうことに退屈することはできない(オビ1グランプリ落選作)。

書くことは抵抗すること。書くことは生成すること。書くことは地図を作ること。
(ジル・ドゥルーズ『フーコー』宇野邦一訳,河出文庫,2007年,p.87)

2012年1月22日(日)

概念の創造の実践――國分功一郎『スピノザの方法』を読む

 以前に書いた國分功一郎『スピノザの方法』(みすず書房)の書評に大幅に加筆し、全面改稿しました。


「それではこの神のことを、われわれは、その寝椅子の『本性(実在)製作者』、または何かこれに類した名で呼ぶことにしようか?」
(プラトン『国家』下,藤沢令夫訳,岩波文庫,1979年,p.309)


 哲学者の國分功一郎の博士論文であり、初の著書でもある『スピノザの方法』(みすず書房)のテーマは、タイトルのとおりスピノザの方法である。
 
 スピノザの方法といえば、だれもが幾何学的方法と呼ばれる『エチカ』(1677年)の記述スタイルを想起するだろう。だが、本書が課題としているのは、もちろんそうした形式上の特徴の退屈な解説などではなく、方法に対するスピノザのどのような考え方がそのような様式を要請したのかという問題である。
 
 無論、それと同時に、本書はスピノザの読み方を教える本でもある。私自身、本書に教えられるまで、理解するどころか、そこに問うべき問題があることさえ気づかずに素通りしていたところがたくさんあったことに気づかされた。本書をつうじてはじめて真にスピノザを読めるようになると言っても過言ではないだろう。
 
 本書第一部の議論を追ってみよう。


・方法の逆説と方法論の逆説
 
・観念の順序と方法
 
・新たな神の概念の創造
 
・デカルト主義の精神



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作成者 平岡公彦 : 2012年1月22日(日) 23:40

2012年1月15日(日)

概念の創造の方法――國分功一郎「ドゥルーズの哲学原理(1)」を読む

 ジル・ドゥルーズの哲学は、なによりその難解さで悪名高い。とりわけフェリックス・ガタリとの共同執筆を開始してからのテクストは、もはやそこでなにが論じられているのかさえわからないと匙を投げる人は専門の哲学研究者のなかにさえ多く、あげくの果てには、ミシェル・フーコージャック・デリダといった、他のいわゆるポストモダン思想家と一括りに相対主義のレッテルを貼って片づけてしまう竹田青嗣のようなエセ哲学者がのさばる始末だった。
 
 それゆえ、日本ではドゥルーズの名を広く知らしめた浅田彰のベストセラー『構造と力』(勁草書房)に端を発した80年代のニューアカ・ブームが終息して以降、ドゥルーズの哲学は長らく誤解と無視にさらされてきた。それが日本の人文思想界全体に停滞と閉塞感をもたらし、カントヘーゲルニーチェといった一世紀以上まえの哲学者ばかりがもてはやされる退行した状況を生んでもいた。
 
 もちろん、その原因の一端はドゥルーズ自身のテクストにあったことは否定しようのない事実だろう。だが、みずからの陳腐な道徳や価値観に照らしてテクストを評価することが読解だと勘違いしているような、哲学書を読み解く能力をもたない批評家や自称哲学者が長年日本の人文思想界を牛耳ってきたこともまた、私たちにとってそれ以上に不幸なことだったと言わねばならない。
 
 しかし、いまや状況は変わった。
 
 いま、日本の人文思想界は、萱野稔人佐藤嘉幸千葉雅也といった、ドゥルーズとドゥルーズ=ガタリのテクストを自在に読みこなし、なかでも『アンチ・オイディプス』(1972年)や『千のプラトー』(1980年)といったフランス現代思想の最難関とされるテクストを縦横に駆使しながら新しい哲学を創造しようとする、才能あふれる哲学者たちが活躍する新たな時代を迎えている。
 
 そして、これから紹介する論文「ドゥルーズの哲学原理(1)――自由間接話法的ヴィジョン――」の著者である國分功一郎もまた、この新たな時代を生み出した哲学者の一人にほかならない。
 
 ドゥルーズの自由間接話法をテーマとする本論文では、ドゥルーズがみずからの哲学の方法に言及したテクストを網羅するように参照しながら議論を組み立てていく、國分らしい堅実な仕事ぶりが遺憾なく発揮されている。これからドゥルーズの哲学を学ぶ人にとっても、すでにドゥルーズの哲学に親しんでいる人にとっても、その理解を深めるための大きな助けとなる論考であり、第一級のドゥルーズ入門書の完成を予感させるのに十分な序章であると言っても過言ではないだろう。
 
 それでは、本論文の議論を順に追ってみることにしよう。


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作成者 平岡公彦 : 2012年1月15日(日) 22:30

2012年1月1日(日)

トップページ(音声ガイダンス:『がくっぽいど』)

平岡公彦のボードレール翻訳日記へようこそ!

あけましておめでとうございます。

はてなに新ブログ
平岡公彦の読書日記
を開設しました。

今後ともよろしく
お願いいたします。

このブログをはじめてごらんになる方は、この記事の一番下にある音声ガイダンスをお聴きください。


『悪の華』出版150周年記念出版


悪 の 華
[1857年版]

ボードレール
平岡公彦訳


同時代の詩人たちに戦慄とともに迎えられ
その後の文学史に恐るべき影響を及ぼした
背徳の聖典
あらたな世紀に花開く格調高き新訳
文芸社◎定価(本体1,200円+税)


全国の書店・オンライン書店にて発売中


このブログで公開している本書所収の訳詩は以下のとおり


  • 2009年3月25日(水)
    照応(『がくっぽいど』朗読)/CORRESPONDANCES, 1857/先行邦訳読み比べ/訳文解説

  • 2009年3月26日(木)
    夕暮れの諧調(『がくっぽいど』朗読)/HARMONIE DU SOIR, 1857/先行邦訳読み比べ/訳文解説

  • 2009年3月27日(金)
    憂鬱(『がくっぽいど』朗読)/SPLEEN, 1857/先行邦訳読み比べ/訳文解説

  • 2009年3月28日(土)
    月の哀しみ(『がくっぽいど』朗読)/TRISTESSES DE LA LUNE, 1857/先行邦訳読み比べ/訳文解説

  • 2009年3月29日(日)
    破壊(『がくっぽいど』朗読)/LA DESTRUCTION, 1857/先行邦訳読み比べ/訳文解説

  • 2009年3月30日(月)
    愛し合うふたりの死(『がくっぽいど』朗読)/LA MORT DES AMANTS, 1857/先行邦訳読み比べ/訳文解説

  • 2009年6月30日(火)
    月の哀しみ(『巡音ルカ』朗読)/TRISTESSES DE LA LUNE, 1857/先行邦訳読み比べ/訳文解説

オンライン書店でのお求めはこちらから


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作成者 平岡公彦 : 2012年1月2日(月) 21:38

知の公共圏の構築――今こそ梅田望夫『ウェブ時代をゆく』を読み返す

 書くことは抵抗すること。書くことは生成すること。書くことは地図を作ること。
(ジル・ドゥルーズ『フーコー』宇野邦一訳,河出文庫,2007年,p.87)


 なんのためにブログを続けるのか。そう自問するとき、いつも読み返したくなる本がある。梅田望夫氏の『ウェブ時代をゆく――いかに働き、いかに学ぶか』(ちくま新書)である。
 
 そのなかで梅田氏は、読者に一つの大きなプロジェクトを託している。



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作成者 平岡公彦 : 2012年1月2日(月) 22:00

2011年のバックナンバー(下半期)


  • 2011年12月14日(水)
    ・闇――highfashionparalyze 1st single(再掲)

  • 2011年11月30日(水)
    ・真理の配列と方法――國分功一郎『スピノザの方法』を読む1(再掲)
    ・國分功一郎の方法――國分功一郎『スピノザの方法』を読む2(再掲)
    ・思考の条件と方法――福嶋亮大「思考様式間の軋轢 『スピノザの方法』――國分功一郎」を読む(再掲)

  • 2011年2月27日(日)
    ・共通概念と出会い――ジル・ドゥルーズ『スピノザ 実践の哲学』を読む1
    ・概念の形成と倫理――ジル・ドゥルーズ『スピノザ 実践の哲学』を読む2

  • 2011年3月6日(日)
    ・共通概念について――『スピノザの方法』をめぐる國分功一郎さんとの質疑応答1
    ・スピノザの宇宙論――『スピノザの方法』をめぐる國分功一郎さんとの質疑応答2
    ・真理の条件と方法――『スピノザの方法』をめぐる國分功一郎さんとの質疑応答3

  • 2011年11月11日(金)
    ・決断について聞く――國分功一郎『暇と退屈の倫理学』についての質問1

  • 2011年11月23日(水)
    ・ダメな書評の見本――阿部公彦の書評ブログ『暇と退屈の倫理学』國分功一郎(朝日出版社)を読む

  • 2011年12月18日(日)
    ・環世界論への疑問――國分功一郎『暇と退屈の倫理学』についての疑問1
    ・本来性論への疑問――國分功一郎『暇と退屈の倫理学』についての疑問2

  • 2011年12月25日(日)
    ・記号の消費と疎外――ジャン・ボードリヤール『消費社会の神話と構造』を読む1
    ・記号の秩序と主体――ジャン・ボードリヤール『消費社会の神話と構造』を読む2

  • 2011年4月24日(日)
    ・道徳の目的と欲望――アリストテレス、スピノザ、そしてカント1(再掲)
    ・行為の選択と自由――アリストテレス、スピノザ、そしてカント2(再掲)

  • 2011年7月31日(日)
    ・法治主義の公理系――スピノザ『国家論』を読む

  • 2011年9月11日(日)
    ・行為の選択と良心――スタンリー・キューブリック監督映画『時計じかけのオレンジ』を観る1(再掲)
    ・苦痛の活用と制度――スタンリー・キューブリック監督映画『時計じかけのオレンジ』を観る2(再掲)
    ・苦痛の活用と技術――スタンリー・キューブリック監督映画『時計じかけのオレンジ』を観る3(再掲)

  • 2011年9月25日(日)
    ・ルドビコ法の現在――スタンリー・キューブリック監督映画『時計じかけのオレンジ』を観る4

  • 2011年10月9日(日)
    ・欲望の統治と虚構――スタンリー・キューブリック監督映画『時計じかけのオレンジ』を観る5

  • 2011年2月20日(日)
    ・思考はどこから生まれるのか――互盛央『エスの系譜』を読む1(再掲)
    ・自由であるとはどういうことか――互盛央『エスの系譜』を読む2(再掲)

作成者 平岡公彦 : 2012年1月2日(月) 20:36

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