2009/11/1 (日)
近頃の高性能
iMacの新型が出て、さらに高速化した「お茶の間向け」コンピュータですが、あなどる事なかれ、Final Cut Studioと組み合わせれば、プロスペックの作品が作れる環境になってしまうのです。10年前では夢のような話、です。
これはすなわち、「プロは高い機材を使えるので高品質のものが作れる」とか、「アマチュアは安い機材しか使えないからクオリティが低くても免除される」‥‥のような、ある種の「甘え」が許されなくなったとも言えます。HDCAM相当の画質を簡単に運用できる最近のMacの高性能ぶりは、プロにとってもアマにとっても、脅威なのかも知れません。
ちょっと試算してみるとiMacとFinalCut Studioで30万ちょいくらいしますが、以前ならば桁が1つ、あるいは2つくらい変わってましたから、何とも凄い低価格化です。
iMacなどのマシンを買う際に気をつけたいのが、メモリとコア数です。ハードディスクはどっちにしろ足りなくなりますから、本体の容量アップはしなくても良いかと思います。同時購入で外付FireWire800(FireWire400,USB2.0はNG)のハードディスクを調達する事になるでしょう。iMacにeSATAが付けば、もっと楽にハードディスクを増設できるんですけどネ。
メモリはすぐ先の未来に64bitの世界が待っていますから、8GBでも足りないくらいです。かと言って、iMacで16GBにするとスンゴい値段が上乗せされるんで、8GBが妥当かなと思われます。
コア数は、今後かなり重要になってきます。iMacのオプションには「2.8GHz Quad-Core Intel Core i7」がありますが、i7だと仮想8コアになるので、是非チョイスしておきたいオプションです。長尺のムービーファイルを出力する際、クラスタで処理する能力に差が出ます。各CPUを遊ばせずに目一杯使ってレンダリングしないと、すぐに半日待ち、1日待ちになってしまいます。‥‥ですから、メモリとハードディスクの増設に余裕があり、PCIeのボードも装着可能、最大16仮想コアのMac Proだと、尚よろしい‥‥のですけどネ。
ちなみにアドビの公式スケジュール(?)によれば、バージョンアップの周期は1年半くらいみたいなので、もしAfter EffectsやPremiereなどのソフトウェア込みで環境を新調する場合は、すぐに欲しい場合はともかく、ある程度待てるようならば、買う時期は慎重に予測した方が良いでしょう。おそらく、64bit化の波は次期バージョンにドっと押し寄せるでしょうから、新型Macを使いこなせるアドビ製品は次期バージョンのCS5‥‥と言う事になるのではないでしょうか。
2010年のワークフロー
今年は、宮本武蔵に始まり、短編の2D,3D作品、また実写作品の作業を担当した(現在進行中も含む)のですが、色々と覚える事が多くて大変でした。ただ、やはり「逆境こそ新しい技術の推進力」でもあり、今までは「XXとはそう言うものだ」と思考をロックしてきた部分にも、メスを入れる事になりました。メスを入れる「痛み」は、新たな可能性や発展性を見いだす「産みの苦しみ」なのかも知れませんネ。
最近完成した短編では「編集」作業も兼任したため、運用上の改善策が色々と見えてきました。今までは何かとテープ(HDCAMやデジベなど)が運用上に絡み付いており、わたし的にはそれが非常にストレスでした。ぶっちゃけ、コンピュータの映像データをテープに落とすのは、面倒だった訳です。
実写作品ゆえにカメラ収録のテープがオリジナル‥‥であるならともかく、出発点にテープが介在しないCGの分野において、コンポジット・編集作業上の中間素材としてテープを用いるのはとても非効率に思えました。
機材調達の面でも、デジベやHDCAM、HDCAM-SRなどの録再機は容易く調達できる金額ではありません。故にスタジオに1台とか、会社に1台とか、さらにはデッキなど所有してない(HDCAM-SRのデッキなんてほいほい買えないよネ、普通)‥‥などの状況に陥ります。デッキのメンテ・修理費だって(一般の家電から比べれば)大変な額ですし、テープも安い訳ではありません。
キネコ入れ用にテープメディアが必要だったり、最終的にHDCAM-SR等のマスターテープが必要なのはしょうがないとしても、中間行程で頻繁にテープメディアが必要なのか、前々から疑問に感じていました。‥‥おそらく、中間行程にテープを用いているのは、各作業セグメント特有の「所有する機材の都合」が大きく絡んでいるのだろうと思いました。
故に私の組んだフローは、「映像データをコンピュータオンラインにて扱う状況」を利用した「テープの介在しない」フローでした。私のごく身近にテープデッキが無い事も「テープを介在させない」フロー作りのきっかけとなっています。もし私のすぐ隣にテープデッキがあれば、特にフローにメスを入れる事も無く、なんとなくテープを使い続けていたかも知れません。
コンピュータ上のデータだけで編集作業をする‥‥と言っても、コンシューマ向けソフトにありがちなショボいミニ画面で編集作業した訳では無く、「フルHD」サイズでコマ落ち無しの快適な編集環境で作業しました。マシンはごく普通のMac Proです(高価な後付けグラフィックボードは積んでいない、ごく普通のMac Proです)が、ちゃんと使えば、ちゃんと動きます。(‥‥逆に言えば、ちゃんと使わないと、まともには動きません‥‥けどネ)
フロー自体は非常に明快で簡潔です。コンポジット出力マスターと(連番ファイルあるいは重いQT)とそのオフライン(高画質で軽いQT〜ProRes等)をペアで管理し、オフラインによる編集後、EDLを元に切り出し・収集して、ロールごとにビルドして出力する‥‥だけです。もちろん、要所要所の神経質な作業はプログラム(専用のスクリプト)にて処理(手作業でネガ編的な作業をする自信は、‥‥私にはありません‥‥)します。またオフライン編集時もProResHQコーデックを使用しているので、まるでオンラインの素材で編集しているかのように作業できます。画質面を考慮しても、HDCAMやSRよりも、DPX連番ファイルの方が余裕がありますし、フロー上で「オフライン」として扱うProRes422,4444ですらHDCAMと比較して遜色ありません。(実際、HDCAM(非SR)ですと、コンポジットのマスターとしては少々ビットレートが足りない様に思います。最近、とある作品のチェック時に、その事を実感しました。だからと言って、SRの録再デッキなんて、各社・各部署でサクっと買えるシロモノじゃあ無いよネ‥‥。)
コンポジットチームは高品質な映像ファイルを「仕様を間違えずに」出力する事、編集チームはEDLで破綻しないように「きれいなタイムライン」で編集する事、サーバ管理チームは「マスターとオフラインのペア」が成立する様にサーバサイドプログラムをぬかりなく運用する事‥‥など、作業とフローが明快になる事で指針やチェックポイントも明快になります。
‥‥つまり、「どのような状況・環境を形成すれば、作業可能」かを実感できれば、自ずとフローの改善点は浮かび上がって来る訳です。実感する為には、まずは体感〜コンポジット・編集・出力にまたがった経験が必要だった‥‥と言う事ですネ。
2010年は区切りの年と捉え、良きものは継承し、改善すべきはどんどん改善する‥‥事が必要かも知れません。
