2008/3/10 (月)
atDB2.0の実装と、制作の構造と。(2)
〜続き
アニメ制作母体はそれこそ「巨大な象」のように何をするにも足取りが重く、故にその巨体を維持する為のカロリーも相当なものです。数珠つなぎの構造は伝達速度が遅く、ディレイの間にロスする要素も少なくありません。違う言い方をすれば、ディレイ損失を補填する運動量を最初から想定した上で、実作業にあたっています。

反して、趣味高じてアニメ作品をリリースしているハイアマチュアの制作母体(いち個人である事が多い)は、それこそサバンナを駆け巡るネコ科動物のようにフットワークが俊敏です。象が「行くべきかとどまるべきか」をグジグジ悩んでいる隙に、獲物に向かって一直線にダッシュできます。
私はアマチュアの利点はフットワークが軽い事だと捉えています。反面、プロの技量を持っていない事が欠点です。例えば、After Effectsのスライド(レイヤーのポジション移動)一つとっても、アマチュアのつめの甘さが露呈してしまいます。
片や、プロの利点は、まさにプロである事=プロの技量と経験を持つ点です。反面、「プロずれ」が発生しやすく、今までの作法でしか仕事ができなかったり、「この程度の事をしておけば、仕事として成り立つ」と言う「従来枠」の中に閉じこもりがちです。
プロたちを少数精鋭で再編成して、機動力と攻撃力を併せ持つ強力な制作ユニットを形成すれば、従来の商業作品及びアマチュア作品とはまた違った作品を作れるのではと思います。絶対的な物量はこなせませんが、先鋭的な作風を作る事が可能となります。また、少数で編成する事で、従来枠のままでも、各精鋭スタッフに入る各予算の向上も見込めます。(従来数人分の仕事を一人で請け負うのですから、当然の話です)

‥‥が、言うは易し、です。実際にやるのは、とても難しい。
何故、今までそれをやってこなかったか?、難しいのか?‥‥と言えば、話は一番最初に戻り、「従来の工法でないと、制作が破綻する」からです。従来のやり方では、「軽いフットワーク」など構造上実現不可能なのです。「少数精鋭って、実際にはどういう事?」「機動力って何?」「少数で制作する際の、実際の手順は?」‥‥と言う初歩的・基礎的な段階でつまずいてしまうのが、実働する前から目に見えるようです。
できないから、やらない。‥‥この地点で今でも足踏みをしている訳です。
新工法を実現するには、一にも二にも「基本設計」が重要です。インスピレーションやアイデアだけでは不可能です。‥‥というか、インスピレーションやアイデアは「あって、あたりまえ」であって、それをどのように運用可能とするか?‥‥が重要なのです。
また、いくらアイデアがあっても、各作業者が「仕事」として認識する為の基礎=「受発注」を見失ってはいけません。「受発注」の要素を度外視して、「コンピュータ上では、できるのだから、できるはずだ」とばかりに制作行程を編成するのは、ギャラの発生しない趣味や学生作品のレベルどまりです。ねこまたやさんとも以前話した事がありますが、「ジョブ」の定義は、商業ベースの制作行程には絶対に必要です。でないと「ただ働き」が発生していまいます。「受発注=入出力」をワークフローに組み込まずに思考するのは、プロのフローとしては致命的な欠陥と言えます。(‥‥というか、入出力を定義しなければ、オブジェクティブな要素をバインド・バンドルする事は不可能なんですけどネ)
未来のアニメ制作へ踏み出すにあたり、私はまず構造母体の「最初の最初」として、atDB2.0を開発(というか、策定)しています。アルファ・ベータ段階で「膿み出し」をおこなって、次期作品にはatDB2.0ありきで作業できるようにしたいと思っております。
atDB2.0の実装と、制作の構造と。
今までのアニメ制作フローの概念は、以下の様な直列型を基本としたものです。

しかし上図のフローでは、3Dなどのコンピュータ導入時代のアニメ制作では支障をきたす事が多いので、以下の様に部分的に手を加えて対処しています。

これらはあくまでも、「セル・フィルム時代」の制作方法を換えずに、如何にコンピュータを取り入れるか?‥‥と言うスタンスです。よって、作品の仕上がりも見慣れた作風にコンピュータの要素〜3DアニメーションやAfter Effectsプラグイン効果〜を付与した内容となっています。
前から散々述べて来たように、今はセルもフィルム撮影台もありません。仕事の傍ら趣味でコンピュータを用いて絵を描いている人の中には、「何故、セルも撮影台も無いのに、昔の都合のまま運用しているんだろう?」と気付いている人たちも増えて来た事でしょう。
もちろん、その「なぜ?」にはちゃんと理由があって、「従来の工法でないと、制作が破綻する」事が多いからです。言い換えれば、「アイデアだけあっても、それを運用するシステムがないと、実現しない」と言う事です。自宅のパソコンの中で出来た事=制作現場で出来る事‥‥ではないのです。
「作業工程」や「システム」なんて言う言葉を聞くと、多くの人は怖じ気付いてしまい足踏みしてしまうのですが、当初できなかった事をできるようにしてきたからこそ、「現在」がある訳です。自分たちもそうした「不可能を可能へ」転じてきた先人達と同じ様に、「破綻しない工法を確立する」「運用するシステムを構築する」事を実践すれば良いのです。
前置きが長くなりましたが、atDB2.0は「決め型の行程」を最初から想定しない設計で開発を進めています。つまり、以下の様な行程も簡単に実現できる仕様となります。



上図を見ると、「未来の制作行程は、複雑な構造を持つ様になる」と思う人も多いでしょう。たしかに、やろうとする事が増えれば、それを支えるシステムも分岐が多くなります。
しかし私の考える未来のアニメ制作は、単に「複雑怪奇」へと進行していくものだけではありません。巨額の予算を投じる際には、それ相応の制作システムを用いて、予算に見合った内容のものを作りたいと思いますが、一元論的に「全てそうなるべきだ」と言うつもりは毛頭ありません。
アニメは「他の映像作品ジャンルに比べて、金がかかる」と言うイメージから、何をするにも「保身」の指向‥‥言い換えれば、以前売れた路線のマイナーチェンジと言う新鮮味の少ない状況に陥りがちです。巨額の予算を投入して新しい事をする「賭け」は、アニメ業界に関わらず、誰にとっても難しいのです。
そうした事例を踏まえて、「大きな予算でクオリティの高い作品」と言う思考だけではなく、従来の予算枠の中でどれだけ野心的な内容のアニメが作れるか?‥‥と言う事も考えています。
〜続く

