2009/3/30 (月)
atDB2.0、そして3.0
atDB(アニメーション技術データベース)の2.0を策定中の現在ではありますが、既に3.0の構想もどんどん湧いてきています。構想があるなら、何故2.0に最初から組み込まないのか?‥‥ぶっちゃけた話が「追っ付かない」からです。2.0の開発・運用・成果を見てからでないと、3.0には進めない‥‥と言う事です。
2.0においては、従来の「行程」「決まり型」を排し、全ての行程や作業を「作業基本形」からの派生として定義します。「作業基本型」から作り出した「任意の作業」群はいかなる接続・分岐・集束も自由、そして機能拡張も自由です。よって、各作業者・作業班を取りまとめた陣形は、統率者の作業計画に合わせて自由にデザインする事が可能となります。「作画の次には仕上げがあって撮影に入って云々」のような、「作業工程と順序をキッチリと決めた方式」しか許容できなかった従来作業フローの限界を取り除くべく、根本から設計し直したのがatDB2.0‥‥と言う訳です。もちろん‥‥の事ですが、この「型を自由に定義する」運用スタイルは、データベース連携型の作業環境でなければ、まず成功の見込みは無いでしょう。
1カットを完成する為に、行程がどんどん増えれば、必要とする期間もコストも上昇します。しかし期間も予算も無尽蔵にある訳では無い‥‥ですよネ。atDB2.0では前回にも書いた様に「キャパ」というか「全体のボリューム」を記録する属性を設けて、「キャパオーバー」を判定する一助とします。これは言い換えれば、「キャパ」属性から「限界」を読み取るのはあくまで制作に関わる人間‥‥と言う事です。しかしながら、複雑な作業マッピングを持つカットが何百にも及ぶと、情報を読み取って人間が判断を下す際に、少々‥‥というかかなり手こずる状況が予測されます。故に、情報判断の手助けをするツールが必須となります。
そこで、現在構想(妄想)中の3.0では、「状況の評価」部分も、当初から設計に盛り込んだらどうだろうか‥‥と考えています。つまり、カット個々、シーン個々、そして作品全体の状況を、「評価した上で人間に伝える」機能を盛り込む‥‥と言う事です。恐らく、2.0を何回も運用した後には3.0の着地点が見えているでしょうから、「状況の評価」の実装アイデアも蓄積している事と思います。現在の1.0を数年運用して、ようやく具体的な2.0の姿がみえた様に。
私は何だかんだ言って、結局はアニメという表現手法が好きだから、今でもアニメの映像制作に関わっている訳で、その「好きでやっているアニメ」が技術的な面は言わずもがな、運用面の不具合によって、不本意な出来になるのは我慢ならない‥‥のです。いくら作画や映像合成の技術を磨いても、それらを活かせる作業体制が無ければ、最終的に映像には決像しません。だとするならば、映像の技を磨くのと同じ重要度をもって、制作基盤・システムを「デジタル」時代に適合したものへと進化させるべきでしょう。
その為には、(私にとっては)まずはatDB2.0の確立が必須‥‥なんだよナ。
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ezura
2009/3/23 (月)
キャパシティの計算
atDB2.0を策定する過程において、現在グルグルと考えているのが「CAPACITY」の算出方法です。一応、必要なプロパティは揃えているのですが、実際にどのような計算式にあてはめるか‥‥を、何度も考え直しています。
キャパシティの算出は中々に難しい‥‥です。例えば「カットのビジュアルエフェクト作業を完成させる」視点だけで考えてみても、以下の様な要素がひしめいています。
●現状
コンポジットの指示内容
カットの尺
素材の状態(セル枚数とか、セル重ねとか)
作業期間
●作業の手段
作業者の数
作業者の映像表現のスキル
作業者の作業速度
作業者の疲労度(稼働率‥‥とも)
マシンの数
マシンの性能
マシンの稼働率
アプリケーションの性能
新規調達する素材
●期待する結果
特定クオリティ以上の映像内容
リテークも含めた作業期間内の完成
‥‥いやはや、数値化が容易な要素もあれば、難しい要素もありますネ。マシンの数や性能は、ある特定の性能のマシンを「1」として設定して、実際に使用するマシンの計測結果から割り出せば何とかなるでしょう。カットの尺はまんま、数値として得られます。
しかし、「コンポジットの指示内容」とか「作業者の映像表現のスキル」だとか、「特定クオリティ以上の映像内容」を数値化するのは、中々に難しい‥‥です。
よく人は「数値は具体的なもの」と考え易いですが、例えば「この赤い花の奇麗さを、数値で例えるといくつ?」なんて聞かれて、具体的な数値として表現できる人なんているのだろうか‥‥と考えます。表現・芸の世界において、数値による評価はひどく抽象的で局所的な判断によるもの‥‥なのです。「局所的な判断」とは、A社では「かっこいい」と評価される表現が、B社では「かっこわるい」と評価されるような事例を指しています。
ですから、「良い」「かっこいい」「奇麗」を数値で表現する際は、当初から「当該作品の価値観の中だけで成立する」事をハッキリと認識した上でおこなうべきでしょう。‥‥まあ、認識したところで、やっぱり数値化はかなり難しい‥‥でしょうが。
しかしながら、例え「抽象的」「局所的」であっても何らかの数値として表現しないと、キャパシティ属性など計算しようがありません。計算が複雑で難しいからといって、止め口パクの3秒と、激しいアクションシーンの3秒を、同じキャパシティとして算出するようでは、結局「何の為のキャパシティ算出」かを見失い、不毛な結果となる事でしょう。
管理者側が大雑把な算出方法で「止め口パクの3秒と、激しいアクションシーンの3秒は、同じキャパ(=実績)」としてしまったら、「激しいアクションシーンをやるよりも、止め口パクの3秒のほうが、得をする」と言うロジックとなり、誰もが作業が楽な方へと流れて、アクションシーンや表現の細やかなシーンが作品から消滅してしまいます。映像表現者が作業上の容易さだけを求めたアニメ作品‥‥なんて、少なくとも私だったら見ないし買いません。
キャパシティを設定した結果、作品を発想する始点から完成するまで終点に至るまで、誰もが楽をしたがる‥‥と言う気風を作ってしまうのだとしたら、キャパシティ属性なんて設定しないほうがマシです。キャパシティ属性を算出・設定する真の意味は、(何度も繰り返しますが)「最良の結果を得る為の、最良の手段」を得る為であるべきです。
‥‥う〜ん。思想的には出来上がってるのですが、実際の計算式は難しい。作業工程の自由なコネクト・バインドを想定している故に、さらに計算は複雑化します。でもまあ、キャパシティを確立しない限り、atDB2.0の成立はあり得ないでしょうから、がんばるしかないです‥‥ネ。
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ezura
2009/3/22 (日)
atDB2.0のオブジェクトモデルをほぼ決定
長い間、悶々と考え続けてきたatDB2.0の基本ガイドラインですが、ふと糸口と言うか、着地点が見つかり、ほんの1時間でオブジェクトの構造をまとめあげてしまいました。やっぱり、頭の中でかなりの部分が見えてこないと、いくら手を動かしていてもモノは作れない‥‥のですネ。
現在作業中の作品は通常のアニメ作品に比べて、色々な素材を色々な使い方で映像に纏める手法を選択していますが、故に追っかけ・状況把握の難易度が高くなっています。ジャンルを問わずにあらゆる映像素材を盛り込むスタイルでは、従来制作手法では解決しづらい事も多いのです。「変則的な取り扱い」でリカバーするにも限界はあります。
しかしふと思うに、アニメ業界に根深く残る意識〜「セルと背景」以外を「門外漢」として扱い「変則的」に対応する事〜自体が、これから先の未来にはナンセンスなのかも知れません。
そんなこんなの日頃の実感が、私の脳みそを、atDB2.0オブジェクト設計の後押しをしたのかも‥‥知れません。
私は絵を捨てるつもりはありませんが、かといって、絵‥‥というか「セルと背景」に固執するつもりも無いのです。最終的に「心を惹き付ける絵」になっていれば良いわけで、絵を完成させる為の有効な手段は意欲的に取り入れていく方針を前々から採ってきました。
‥‥しかし、現在まで私が育ててきたatDB〜アニメ技術データベースのバージョン1は、従来技法の域を脱し得ないものでした。故に、新しいタイプの作品と遭遇する度に、追加変更を余儀なくされ、「整然」とは真逆のベクトルへと拡張(というか、撹乱)していった‥‥のでした。
思えば、atDB1.0を作り始めた数年前は、まだ自分自身、「俯瞰で構造を把握する」視点が支配的だったと思い起こします。すなわち、全体のワークフローをキッチリと決めて、行程を確定して‥‥のような考え方です。
もちろん、そのような「作業工程FIX型」の意識が強かったのは、ちゃんとその時々の理由があったのです。2000年頃にデジタルに移行して、グッチャリと溶けた様な状態(例えば、「デジタルだと何でもできる」のような根拠の曖昧な思い込み)に変化してしまった現場を、何とか「固める」には、決め型の行程=「型」にハメこむ打開策が必要だったのかも知れません。少なくとも私は、「曖昧にしようとすればとことん曖昧にできる」境界線を明示する為に、「決め型」を設定して制作に関わってきました。「撮影」「エフェクト」と言う枠組みを決めて、たとえ「撮影」「エフェクト」スタッフがPhotoshopが使えるからといっても、ペイントやBGのデータ修正はしない‥‥と言う事を徹底してきました。
しかし、ある程度、現場の意識が固まってきた今日、「決め型が可能性を否定する」ジレンマも見えてきました。各個人の能力の活動範囲を、行程の「仕切り」が封鎖する‥‥という状態です。
私は近い未来、「能力封鎖の解除」を盛り込みたい訳ですが、これはいわゆる「撮影がペイント業務もする」事〜業務外の仕事をタダで請け負う事を指しているのではなくて、多様な能力を持った人間が「実写をリタッチする業務」「イメージボード制作の業務」「コンポジットの業務」など広範な業務を請け負う‥‥と言う事を指しています。
決め型ありきで作られた現状のatDBバージョン1では、そのような「封鎖解除」の取り組みには対応できなくなる事が明白です。「最良の結果の為の、最良の手段」=EBOを体現する構造とオブジェクトが、新しいatDBバージョン2には必要なのです。
atDB2.0は絶対的な視点の他、相対的な視点でも、情報を評価する事ができるように設計しています。また、分岐・結合・新規・削除・代替といった「新しい取り組みの際に起こり得る行為」をチェイスできるようにも設計しています。自由なコネクト・バインドは当然、実装しています。
その他、「限界」「破綻」も予測・記録できるように設計しています。この辺は、日頃のフィードバック‥‥ですかネ。デジタルはブラックボックスだから解らない‥‥などとほんの数年前まで言われていましたが、現在でも「破綻」の危険性はすぐ隣に存在しています。行程全部を組み合わせたらキャパが200%になってしまった‥‥では、新しい映像を作り上げる前に、倒れてしまいます。atDBバージョン2は、ある種「クギを刺す」役回りも担うのです。
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ezura
2009/3/20 (金)
eMacにVine Linux
私の愛用するeMacは、購入当時はそこそこ高速だったものの、現在ではOSの動作すらモタつく有様です。まあ、10.5(Leopard)は見るからにリソースを喰いそうなので、G4/1GHz/768MBメモリではキビしいのでしょう。
eMac、Leopard、Pagesの組み合わせでは、もはや実用の域を下回っており、オフライン(軽量なテキストエディタ)で文面を書いて、Pagesに流し込む‥‥のような「オフライン編集」状態でしか、マトモに動かない状態です。「Leopardを使うなら、Intel Macを買ってネ」と言う無言の圧力のようなものをヒシヒシと感じます。
ただ、マシンに愛着のある私としては、たった数年で故障もしていないマシンを捨てられるか!‥‥と言う事で、eMac & Leopardの組み合わせを見限り、eMac & Vine Linuxの組み合わせにチェレンジしてみる事にしました。
最初、eMac内蔵HDD80GBの全ての領域をVineに割り当てたのですが、いざと言う時にOSXでもブートできるように、80GBを2つに分割してOSXとLinuxのデュアルブートとしました。私は一時期68K & NetBSDで各種サーバを運用していた事があるので、現在の「何でも良きに計らってくれる」パーティションツールは極楽そのものです。OSXの「ディスクユーティリティ」でHDDの半分を「空き領域」にしておけば、Vineインストール時のアシスタントがその空き領域を適当にLinux用の構成に切り分けてくれます。
で、実際にVine PPCを使ってみると、これがまた快速。Leopardの時の鈍重な挙動が嘘のようにキビキビと動作します。
Ubuntuを使っているので、滑らかなデスクトップへと変化(へんげ)したモダンなLinuxには今更驚きはしないのですが、システムの設定項目1つとっても、以前に増して「常人の用いるデスクトップOS」らしい感じになっている事に嬉しくなりました。私がVine Linuxを最後に使ったのはCeleron500MHzくらいの時代でしたが、ほとんど「別のOS」と言って良い程「外観」「使い勝手」が向上しています。さすがに、MacOSXのような「ハードとそのスペックを前提としたOSの作り込み」に因る使い心地の良さは無いにしても、以前の「ちょっと困るとコマンドラインで解決」的な過去とは一線を画す出来映えに驚きます。
Thunderbird、OpenOffice等々を「ソフトウェアアップデータ」的なラクチンアップデータで追加インストールし、めでたく「映像制作事務用eMac」に仕立て上がりました。
スクリーンセーバ設定を覗いてみると、あれまあ、昔懐かしい「Flying Toaster」があるじゃありませんか。‥‥早速、「Flying Toaster」をスクリーンセーバに設定しました。
サーバではなく、デスクトップOSとして使う事を目的としたVine Linux。しばらくの間OSXと並行で、使い込んでみようかと思っております。
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ezura
2009/3/14 (土)
ツールキットにEDL読み込みルーチンを追加
現在私の自己開発するツールは、以前のスタンドアロン型(と言うか、パッケージ同梱型?)から転じて、Application Supportなどに共有ライブラリを配置し参照して動作する型へと「路線変更」しています。何故かと言うと、頻繁に使うルーチンを1つにまとめた方がアップデートが容易だからです。
プログラムを本職としている方々と違い、私はあくまで自己研究の範疇でプログラムをしているので、専門職の「常道」と言うものが解りません。故にApplication Supportなどのライブラリファイルにしても、「考えてみれば、アップルやアドビ製のソフトとかは、随分以前からライブラリフォルダに色々と置いてたよなあ‥‥」と思い起こす事は出来ても、実際に自分で作っている時には「そう言う作り方」をしていなかった訳です。いやあ、共有ライブラリって、結構便利‥‥なんですネ。
共有ライブラリが拡充してくると、ちょっとしたスクリプトなどは制御構造のみ=「骨組みだけ」で作れてしまいます。例えば、任意のフォルダ内のQTファイルを任意検索文字列で振り分けた後、尺(デュレーション)の一覧を書き出す‥‥なんていうのは、ほとんど共有ライブラリで処理できてしまいます。
で、本日新たに「EDL」(Edit Decision Listの略)の基本部分を解析するAppleScriptルーチンを共有ライブラリに追加しました。PremiereやFinalCutの書き出すEDLの内容文のうち、アニメ制作に必要なものを抜き出して、ラベル付きリスト(ちまたで言う連想配列のようなもの)として返すルーチンです。‥‥ちょうど昨日、EDL関連の話題を知人と話したので、忘れないうちにAppleScriptルーチンとして書き留めておいたのです。
「AppleScriptって、EDLが読めるの?」とギモンに思う‥‥かも知れませんが、EDLを読む‥‥というか、単にテキストファイルを読み込むだけの段取りです。read命令でString型で読み込めば、EDLの読み込みは終了、後は内容文の解釈だけです。例えば、以下の様に。
set EDLContents to paragraphs of (read (choose file with prompt "EDLを選択") as string)
上記例文ですと、EDL内容文を読み込んで、行ごとのリスト(一般的には配列‥‥ですネ)として、変数EDLContentsに格納します。直ちにrepeat文に持ち込める様に‥‥です。
EDLは中身を見ると、平易な文字列で内容を表記してあるのが解ります。試しにPremiereやFinalCutでEDLを書き出して中身をテキストエディタで見れば、法則性が見えてきます。‥‥ただ、私はあくまでコンポジット作業者の作業一貫でEDLを扱っているので、ヘヴィな内容のEDLは目にした事がありません。‥‥なので、そんなに悩まずに内容が解析できるのかも知れません。
001 001 V C 01:35:11:00 01:35:26:00 01:00:00:00 01:00:15:00
*Guide to EDL Managementより引用
*HTML上の関係で、空白文字がオミットされています。preタグを使っても、空白文字は1文字に纏められちゃうんだっけか‥‥?
「Guide to EDL Management」によると、CMX3600の「MAXIMUM NUMBER OF EDITS」は999‥‥らしいので、行先頭3文字決め打ちで取得して「試しに整数化」してみればクリップ各々の先頭行か否かが判別できそうです。‥‥いや、ホントは正規表現を使いたいところなんですが、AppleScriptにはそういうのが無いので‥‥ネ。
try
(character 1 thru 3 of |現在の行|)as text as integer
end
4つのタイムコードは、空白文字で文字列分割した最後の4つになります。
set AppleScript's text item delimiters to " " as unicode text
set tcList to text items -4 thru -1 of (|現在の行| as unicode text)
set AppleScript's text item delimiters to ""
こんな感じで、EDL解析ルーチンを作成し、ツールキット(共有ライブラリ)に組み込む事で、自分のMac環境が「EDLを読むルーチン」を有した事になります。
まあどう考えても、アニメの、しかもコンポジット業務に偏ったツールキットではありますが、自分のMacがほんの1行の呼び出し文でEDLの内容を取得できるようになるのは、やっぱり便利です。近い未来、こうしたツールキットをふんだんに活用する事を前提とした未来の現場を築きたい‥‥と考えております。
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ezura
2009/3/8 (日)
基盤・下部構造
いわゆる、「インフラ(ストラクチャー)」というヤツです。しかし、今の日本でインフラと言うと、「道路・通信・公共施設など『産業や生活の基盤となる施設』」を指すらしいので、あえてインフラと言う言葉は使わない方が無難でしょう。
ほとんどのアニメ会社でコンピュータを導入するようになり、あたかも、アニメ業界にコンピュータが根付いた様に見えます。しかし私の日々の実感では、コンピュータは何かの代替品のように使われる傾向が強く、「根付く=下部構造に浸透した」とはほとんど感じておりません。メールは手紙や電話の代わり、テキストエディタは原稿用紙やメモ帳の代わり、エクセルは表を作る紙と鉛筆の代わり、After Effectsはカメラの代わり‥‥などなど、「目に見える部分だけ」をすり替えただけの状態に留まっていると感じます。
特に「代替品から脱し得ない」使い方を感じるのは、表計算ソフトです。使い方を知っている人はちゃんと使っているのでしょうが、単に上司・先輩から「表を作る時はエクセルを使え」‥‥なんて指導されている若い人は、エクセルを「表計算ではなく表作成」ソフトだと思い込んでいる事も多いんじゃないか‥‥と感じます。「計算?‥‥会計でもするの?」なんていうイメージすら存在するのには、腰がくだけてしまいます。計算を必要とするのは、お金だけじゃあるまいに‥‥。
エクセルは開発者が意図した通りに使いこなせば、「複雑な集計・統計」が可能であり、使い方によっては強力な助っ人に成り得るツール‥‥なのですが、どうにも「そんな風に使っている気配がない」事例に遭遇する事があります。‥‥何とも勿体ない使い方です。マクロ(ちなみに私はNumbersを使っていますが)を駆使すれば、各種情報を瞬時に集計して把握する事ができますが、「表を作って一文字ずつ書き込む」使い方では苦労が報われないばかりか、反ってケアレスミスの原因になる事すらあります。誰でも「苦労は報われたい」もの‥‥ですよネ。
違う見方をすれば、制作体制の基盤・下部構造は10年前と変わらず、上っ面の道具だけが入れ替わった状態に留まっているので、コンピュータの機能を積極活用する気運が生まれない‥‥のかも知れません。10人のうち1〜2人だけがエクセルを使いこなしても、散発的な収穫しか得られない訳で、現場全体の下部構造に浸透して作業状況を把握し予測するような使い方は、なかなか生まれてこない‥‥のでしょうネ。いち個人の工夫や奮戦では、局所的な成果しか得られないのでしょう。
ゆえに、次世代の作品作りは、制作の前段階にどれだけ「基盤・下部構造」のシステム作りが出来ているかが「キモ」だ‥‥と強く実感しています。グループウェアはもちろんのこと、個人レベルのエクセルの使い方1つにしても‥‥です。
監督がどんなに強い作品イメージ(=脳)を有していても、腕っ節の強いクリエーター達(=腕や足)を呼び寄せても、各個をリンクするシステム(=神経)が発達していなければ、強い「制作現場(=人体)」は作れない‥‥と思うのです。とかく人々は「パンチ」だ「キック」だ、「頭脳プレイ」だと盛り上がりますが、全機能を整然と統制する神経系統には注目しません。ちょっと考えれば、神経がどれだけ重要かは解るはず‥‥なのにネ。
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ezura
2009/3/2 (月)
Blu-rayの画質について
Blu-rayについて、普及周辺の雑感とかは書いてきましたが、画質そのものについては書いておりませんでした。私はレンダリングした非圧縮の画像ファイルを毎日のように扱う立場の役職ですから、Blu-rayのような、高圧縮技術に基ずく映像がどのように変化するかは、非常に興味のあるところです。
今まで、何作品かBlu-rayの映像チェックに立ち会いましたが、映像そのもの品質は非常に高く、むしろ、周囲の状況〜テレビの性能とか部屋の照明とか〜が、総体的な品質を大きく上下させるように思いました。
Blu-rayの画質は、制作スタッフが映像をチェックする際に用いる映像ファイルとほとんど変わらない品質を有しており、ずばり「何もかも見えてしまう」ほどクリアです。線画スキャンの調整の具合、スムージングプラグインの特性など、舞台裏の些細なディテールまで克明に伝達してしまう「驚異(脅威?)」的な性能を有しています。「チェックルームから、ご家庭へ」‥‥そんな感じです。(高品質の映像をBlu-rayにパッケージできるは、当然の事ながら、Blu-ray担当の映像技術者さんたちの成果あって‥‥の事です。事情に薄い人は「Blu-rayだと何でも奇麗になる」と考えやすいのですが、技術者あっての画質です。)
従来の知識‥‥例えば、テレビで放送するとゴマけていた‥‥とか、劇場でフィルム上映すると馴染んだ‥‥みたいな「ある種の保険」は無くなります。出力した画像の品質そのものが、まんま、お茶の間に届けられる‥‥と言っても過言ではありません。
これは「多少荒くても、ちゃっちゃと作って、さっさと完成しちゃえ!」と言う切羽詰まった制作状況には、非常に不利に作用します。荒さはそのままの状態でユーザに伝わってしまうからです。もちろん、アップコンのボヤけもそのまま伝わります。
SDの時の「誤摩化し」手法は、HD/Blu-rayにおいては「誤摩化し手法が淡々と上映される」に過ぎません。非常に冷静に状況を映し出します。粗を隠す為にディフュージョン的な効果をさっくりのせると、その「さっくりとのせました」感がそのまま映像に現れますし、何よりも「変にボケて見える」ように受け取られてしまい、基本的な品質が低いと言われてしまうかも知れません。「とは言ってもやっぱり、誤摩化しが必要な時だってあるだろう」と言う場合は、「今までの何枚も上手の誤摩化し」が必要になります。この点は、よくよく注意した方が良いでしょうネ。
そうした「誤摩化しを許さない」高画質に対して、私自身、最初は「凄いけど怖い」と感じていました。‥‥が、見続けているうちに逆に「それだけの性能を持っているのなら、その性能を使いこなせば良い」と思う様になりました。考えてみれば、今まではどれほど高品質に画像をコンポジットしても、SDサイズ・NTSC準拠の際にガクンと情報が失われていました。奇麗に作っても、多少荒く作っても、SDコンテンツになれば皆同じ‥‥になってしまうような状況だったのです。しかし、「ちゃんと作れば、ちゃんと伝わる」という土台があれば、「良いものを作ろう」とする創作意欲が湧いてきます。
新技術を上手く活用できないばかりか、制作上のハンデにしているようでは、未来は無いんじゃないか‥‥と、しみじみ感じた次第です。
ちなみに、Blu-rayのような高品質映像を、家庭でじっくりと、プロライクに堪能するには、テレビの性能も欠かせません。テレビを購入する前に製品の取扱説明書のPDFファイル等を入手して熟読し、「色温度設定」や「オートゲイン入/切」「モーション補完入/切」などの機能が付いているか、事前に確かめた方が良いでしょう。最新型テレビの「先進機能」が、反って映像に意図せぬ悪影響を及ぼした際は、機能をOFFにして対処します。ただし、中には「機能は常時ONでOFFにできない」テレビもありますので、買う前によく調べて買った方が後悔しなくて済みます。実写に効果のある機能が、2D/3Dアニメーション作品に適するとは限らないのです。
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ezura
2009/3/1 (日)
BD-Rのメディアが180円まで下がってきたけれど
BD-R(25GB)のメディア単価が180円程度のものも出始めたようです。1GBあたり7.2円くらいになる計算です。
非常に魅力的な単価ではあるのですが、記録メディアと常用するには、あともう少し「売り」が欲しいところです。売り‥‥とは、画質とか売価とかではなくて、ぶっちゃけた話、将来性というか、保守性(=フォーマット存続)‥‥です。
私はBlu-rayの画質チェックにも立ち会う事もあるので実感していますが、はっきり申しまして、Blu-rayのビデオ画質に関しては何の不満もありません。テレビとプレイヤー合わせて20万円以下程度の出費で、「あの奇麗な画質」が自宅で観られるなんて、現代人は随分と恵まれているなあ‥‥と感じるほどです。もしBlu-rayが一般家庭標準となれば、クオリティを重視するタイプの映像制作者の創作意欲は一層高まるんじゃないでしょうか。自分たちが苦労して作り上げた1分1秒1フレームに至る全ての「絵」を、今までで最高の市販レベルで受け取ってもらえるのですから。
しかし、ふと家電売り場を振り返ると、Blu-rayプレイヤーの種類があまりにも少ないのに驚きます。選ぶ余地無し‥‥といった状況です。3万円台のエントリーモデルも、10万円付近の高品質モデルも、どれも数が少ないのが、何とも不安をかき立てます。
Blu-rayビデオレコーダーの売り上げが向上しているようですから、DVDの時とは違った形で、メディアの普及が進むのかも知れません。しかし、メディアフォーマット乱立の昨今、普及のスピードがあまりにも遅いと、「油揚げをさらわれる」様な事もあり得るかも知れません。
以前、「高画質だけでは売りにはならない」と書いた事がありますが、違う言い方をすれば、「売りになる高画質性能は有しているのに、他の要因で足並みが揃わず、足踏みをしている状態」とも言えそうです。
こうした状況の中、私のような映像コンテンツを作る側の人間のできる事は、ズバリ、HD/Blu-rayで最大限の魅力を発揮する作品作りでしょう。何年も前から書いている事なんですが、従来思考のアニメ作品をアップコンでHDに対応させている状況では、「すげぇ」と思わせる作品は現れ難くて当然です。企画の段階から「HDで何が出来るのか」を把握していなければ企画に盛り込む事など不可能です。
足並みを揃えるのって非常に難しい事ですが、少なくとも映像制作者サイドとしては、「今から攻勢に出るぞ」と言う時に「即、出陣」できるように整えておきたいものです。戦いが本格化した時点で、慌てて「HDでアニメを作る時、何をすれば勝てるんだろう」と悩むようでは、「時、既に遅し」かも知れないですから‥‥。
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ezura
RD-XS46、とりあえずメンテ終了
ビデオレコーダーRD-XS46の内部にあるハードディスクドライブとDVDドライブの交換を完了し、一応、健康状態に戻りました。
一応‥‥と付け加えているのは、完全に健康な状態に復活した訳ではなく、「実働上は問題無し」レベルの状態(=動作が少々異なる部分があるけど、実用上は害はない)だからです。
動作が少々異なる部分‥‥とは、DVDドライブの挙動です。
DVDドライブをOptiarc製のAD-7200Aに交換したのですが、トレイにディスクを入れないで閉じると、2〜3分の長きに渡りディスクを検索しようとして、他の操作ができなくなります。「ディスクをチェックしてください」というアラートが出て終わるので(応答待ちのタイムアウト?)、‥‥まあ、アラートの文面をごく普通に解釈すると、然るべき情報(ディスクの有無)がDVDドライブからオペレーションシステムに返っていないのでしょうネ。
ですから、何かしらのディスクを入れておくと、すんなりと段取りが進みます。‥‥如何にも「代替パーツによるリカバー」のような修理結果ですが、DVDドライブの交換に数万円もコストを割きたく無いので、これで良し‥‥とします。
もちろん、東芝提供のDVDドライブ用ファームウェアは使えません。まあ、XS46自体が2005年のモデルだし、未来に大きなアップデートが有るとは思えないので、実害はないでしょう。
HDDに関しては、交換に関しては、特に何の問題も発生しませんでした‥‥が、元HDDのデータ追い出し中にデータがクラッシュし、「このドライブは何の読み込みも書き込みもできません」という「最悪の状態」に落ちてしました。追い出し作業の70%は完了していたので「全損」ではないですが、30時間くらいの録画データを失ってしまいました。
調子の悪くなったHDDからのデータ救出は今までに何度も経験していますが、10〜20%までしか救えなかった事もありますから、30%の損失で済んだのは、まあ‥‥70%救出までHDDが持ち堪えてくれた事で「御の字」と思う事にします。
パーツ交換の済んだXS46は、現在快調に動作しております。
ちなみに元パーツのHDD(Seagete製でした)は、異音もしないし動作音も静かなので、「もう少し保ちそうだな」と思い、復活させてみる事にしました。サーフェイススキャン及び不良セクタのマップアウトを行い、現在(とりあえずは)ごく普通に「USB外付HDD」として動作しております。
元パーツのDVDドライブは、如何にもヘタったおんボロい音がするので(ギィギィとドアのきしむ様な音がする)、眠らせてあげようかと思います。
作成者
ezura