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2011/12/24 (土)

移行期にはよくある事

Blood 2000年劇場版を作っていた頃、自分の職種が従来の行程のどれにもあてはまらず、クレジットをどうしようか悩んでいた事がありました。当時の私のクレジットがころころ変わるのは、モロにその悩みの影響でした。思えば、当時は制作手法の移行期で、今までにない役職や作業内容が発生していましたから、仕方の無い事ではありました。

最近、背景だけ美術さんにお願いして、後は全部自分でやるような仕事も引き受けるようになりました。レイアウトを描いたら、原画・動画・仕上げ・撮影&エフェクトを全て一人で担当するわけですが、‥‥それは結局、なんて言う役職だろうか? ‥‥まあ、考えつかない訳です、簡単には。

近作ですとギルティクラウンの11話、ラストのエフェクトシーンがその「カテゴリ不明の作業」の代表例です。ビルが粒子に崩壊して中央の塔みたいなものに結集するカットで、背景以外を全て担当しています。おそらくソレと同内容を従来行程でやったら2,000枚くらいの予算にはなると思われます。しかも動画は地獄の様な中割りをしなければならず、単純にお金には換算できないかも知れませんネ。

担当カットでは、自己研究の技術の中から一般作品に適合しそうな無難なものを、ごく断片的に使っています。つまり、一般のアニメ用に開発した技術ではなく、新技術からのスピンオフ的な使い方です。背景の上にセル‥‥という「分離した」絵作りではなく、動く絵画としてトータルコントロールする手法を、作品内で異質になり過ぎない様に、片鱗だけ導入してみました。解像感はもっと高詳細に表現できたのですが、前後の合わせの関係上、少し甘くしてあります。‥‥思えば、こういう技術も今のアニメでは呼び名がないですよね。

私が以前から自己研究を「アニメ」ではなく「新しいアニメーション」と呼んでいるのは、どのカテゴリーに分類すべきなのか、決めきれないからです。技法に関係なく、絵を動かすのは「アニメーション」と呼ばれますが、セルと背景を撮影するのが「アニメ」だとしたら、私のはアニメとは呼べないので、都合、大カテゴリーの「アニメーション」と呼んでいるのです。少なくとも、現時点は、です。



自宅の自己研究では、レイアウトからコンポジットまで、一切の行程を全て自分で作業する事もあります。原動画・背景・ペイント・ディテールアップ・コンポジット‥‥。従来は専門職がおこなっていたこれらの仕事を1人で作業する人を、なんて呼べば良いのでしょうかネ。やはり「アニメーター」なのかな? それとも「アニメーション作家」? 判断できないですね。

脚注:
 本文中のYouTube映像は、作画開始からペイント・背景作成やコンポジット終了までレンダリングを含めて5時間程度で、全て一人で作業しております。キャラをわざとセルアニメ風のディテールにしているので、各工程の作業が楽(=絵柄の簡略化によって)だった事もあり、短時間でフィニッシュできました。まあそもそも、こういう絵柄だったら、普通に従来アニメ行程で作れば良いとは思います。新技術でフェイクを作るというのも、不毛ですしネ。
 今までのアニメをなぞるよう技術は新技術とは呼べないし、自己研究しているのもこういう類いの「代替」技術では無いのですが、‥‥まあ、いわゆる、テストの一環ですね。



作成者 ezura

ダイモ

物品ネタが続きますが、今回はダイモです。「なぜ、今更ダイモ?」と思われるかも知れませんが、本棚にバインダーやドキュメントケースなどを並べた時に、(私にとって)一番しっくり来るのが、ダイモのラベルだからです。



ラベルプリンタによるラベルは確かに視認性は良いのですが、なんといいますか、「雑然とした事務所」のような雰囲気を倍加させてしまう事が多く、倉庫もしくは役所のようなイメージになりがちです。もちろん、スタイルシートよろしく、ラベル色や書体を吟味し、そのラベルに合う事務用品をチョイスすれば、見栄えはグンとよくなって整然とまとめられますが、大体は無造作かつ場当たり的にラベルを印字して貼付するので、どんどん猥雑な情景へと化してしまいます。

実は私も、その昔は「書類収納のかっこなんてどうでもいい」と思っていたクチなんですが、「煩雑なラベルがごちゃっと並んでいるさまって、何か、デリカシーに著しく欠けるよなぁ」と思う様になってきて、近年はラベルを貼らずにバインダーの成形色で整理していました。しかし、色で分けるにも限界がありますし、時が経つと「何色がどれ」だったか忘れてしまいますので、少々困っていました。

ふと、昔懐かしいダイモを思い出し、ネットで探してみたら、まだ健在のようで、最近購入して使いはじめたのです。私はプロジェクトを全て英数字で管理できるようにしてあるので、ダイモの英字大文字と数字、ハイフン(横棒)があればカバーできるのです。お気に入りメーカーのドキュメントボックスの背に、ダイモの「立体文字」を貼って棚に並べると、作業場の情景にしっくりと馴染みます。

でもまあ、事務用途や制作用途では、ダイモだと非常に面倒です。例えば「anm_01_058」を印字するのに10回ダイヤルを回さなければならないなんて、非現実的です。大量にモノをこなす実制作ではコンピュータを活用して、データベースと連携し自動処理にてラベル印刷すべきでしょう。

しかし、流れ作業で動く物事とは別の、創作のアイデアを練る場所では、「ダイモの控えめな雰囲気」がほどよくマッチします。

ダイモは安いのから高いのまで幅広いのですが、事務で使うわけではないので、1,500円の文字盤一体型のを使っています。子供の玩具のようなナリですが、猛烈にタイプする事は考えられないので、必要充分です。

作成者 ezura

2011/12/23 (金)

もしEOSデジタルを持っているのなら、

カメラつながりの話題‥‥ですが、EOS Kissなり、30D〜60Dなり、EOSデジタルのボディを持っているのなら、絶対に所有すべきなのは「EFレンズ EF50mm F1.8 II 単焦点レンズ」です。アマゾンで売価9,000円以下ですが、文句無しのイチオシです。‥‥あ、既に同焦点のLレンズとか持っている人は別ですヨ。

APS-Cのカメラだと、画角が狭くなって、中望遠的な絵になりますが、反ってそれが思わぬ効能となり、雰囲気の良い絵が撮れるのです。解り易い例としては、絞りを開放して(EF50mm F1.8 で言えば、F値を1.8にして)人物や動物のバストショットを撮影すると、「ああ、なるほど」と実感できると思います。

アニメの作画は大体、キャラは中望遠で背景は広角という、焦点をミックスした絵になり易い(絵コンテでそれを求められているので仕方が無い)のですが、実際のカメラを構えてみると、融通の利かない単焦点の作図ゆえに、逆に新鮮な驚きがあります。

ズームレンズも使い勝手が良いのですが、潔く単焦点で撮影してみるのも、中々に楽しく、また刺激的なものです。絵しか描かない人も、ものは試しで、一眼レフカメラ(コンデジはダメよ)のファインダーを覗いてみても良いかも知れませんよ。

わたし的には、作画やコンポジットである程度稼げるようになってきたら、一眼レフの1台くらいは持っておいても、損にはならないと思うんですけどネ。

*ちなみに、画角ミックス以外で、絵コンテのオーダーでよくあるのが、「オープンセット」(=壁などを取っ払った舞台のようなセット)の絵です。コンテマンは「それがオープンセットだとは思わずに」ほとんど無意識で描いているとは思うのですが、実際にGoogleSketchUpで芝居場を組んでみると、よく解ります。逆に言えば、アニメの絵がアニメっぽい味を持っているのは、オープンセットの絵が頻繁に出てくるからかも知れません。

作成者 ezura

カールツァイスのキレ味

私がよく使うヨドバシのネット通販Webサイトで、ソニーNEXの交換レンズを紹介していました。「カールツァイス製」と聞いて「?」と思いましたが、読んでみると「SONY Eマウント 初」のようで、合点がいきました。‥‥まあ、ソニーは昔からカールツァイス製の玉を用いてましたから、ありえる展開ではあります。

で、Webの紹介記事で画質を見てみたら、まさにカールツァイスそのもののキレ味。カールツァイスに大枚をはたく理由をまざまざと見せつけてくれます。

「レンズなんて、皆同じじゃないの?」とか「デジタル処理でいくらでも同等画質にできるんじゃないの?」とか言う人もおられるでしょう。‥‥まあ、たしかに「あと一歩」のところまでは、フェイクでも迫れます。しかし、その「あと一歩」を踏み越えるのができないのです。

カールツァイスはズルいくらい、絵を上質なものに変えます。私にとって、CONTAXの一眼レフなど高嶺の花すぎて、フィルム時代が終焉するまで遂に手に入れる事はできませんでしたが、その画質は何度も見て驚嘆し、手持ちのEOSで奮闘したものでした。

NEX-5Nボディゾナーの組み合わせで、大体14万か。‥‥たしかに購入のハードルは高いですが、見合う価値はありますネ。私がその昔(20年以上前か)、EOS100QDとズームレンズのセットを買った値段と大体同じです。今だと、EOS60D+レンズのセットが10万くらい(凄く安くなった!!)ですから、比較した場合、中々に判断が難しいです。カールツァイスレンズの誘惑はかなり大きいものがありますが、フルサイズボディの一眼レフも写真を撮る道具としてはコンデジなど比較にならないほど性能が高いですし。

初心者だから関係ないや‥‥とか思う人がいるかも知れませんが、実は初心者ほど「定番機種」を買うべきなのです。私はその昔、「初心者だから安いのから入って‥‥」と考えていましたが、思い起こせば、無駄な出費だったと思います。まあ、それもお勉強代‥‥ですけどネ。

ピアノやギターでもそうですが、よく言われる「初心者は安価な機材からスタートする」のは、実はかなりの勘違いなのです。上達した後は、トイカメラでも何でも使えば良いですが、初心者のうちは、質の良い機材(=ぶっちゃけ、「中クラスかそれ以上」と呼ばれるもの)を使わないと、「どこに標準値があるのか、判断できないので、上達し辛い」のです。むやみに高いものを買う必要はありませんが、安いものを買って3ヶ月くらいで限界を感じるのならば、覚悟を決めて中クラスを買った方が良いですネ。

例えば、エレキギターだとサウンドハウスのPlayTechギターが驚きの5,980円で売っていますが、逆にそれは上級者向け、もしくは「弾かないで飾る人」向けです。例えば弾いた音がビビる(サスティンが伸びずにすぐに消える)時に、初心者だと「自分の弾き方が悪いのか、ギターが悪いのか、判断できない」のです。エレキギターをある程度弾けるようになりたいのなら、50,000円前後のクラスは必要です。‥‥カメラも同じで、写真術(=作画術・After Effectsコンポジットにも多分に応用できる)を、1万円のデジカメでマスターするのは、とても難しいのです。

 
しかし、NEXもゾナーレンズの出現で、とびきり魅力的なデジカメになりました。ゾナーを装着したNEXを持ち歩いてたら、さぞ、写真を撮るのが楽しくなるだろうなあ‥‥と思います。欲しいなあ。

作成者 ezura

2011/12/21 (水)

電動鉛筆削り

‥‥を最近物色しています。昔から、「鉛筆削りって、テキトーなのが多いよなあ」と感じていましたが、近頃は特に気になっています。事務用品と画材の区別なく製品化されていると言いますか、画材として機能の優れた鉛筆削りがあまりにも見当たらなくて、途方にくれております。

今のところ、電動型でニーズなんとか見合いそうなのはカールの「アイン」ですが、画材として見た際には「もうちょっと機能が欲しい」と感じます。先端処理に5段階くらいの調整が欲しいし、削り過ぎ強制停止装置ではなく警告ランプくらいの方がユーザーサイドの調整が利いて良いですし、メンテナンス性を考えた設計は必須ですし‥‥、やっぱり、電動鉛筆削りって、学習用か事務用でしか商品企画をしていないのかもなと、しみじみ実感します。

私が現在使用しているのは、手回しの鉛筆削りでドイツ・ダーレ社のものと、同じくドイツ・M+R社のものです。「手回しなんかで、面倒じゃん」とか言われそうですが、全ての行程を手回し鉛筆削りでおこなっているのではなく、「鉛筆で清書する場合のみ」なので何とかなっています。他の行程は2mm芯のホルダ・シャーペンなどでおこなっています。ステッドラー・925の「20」は、良く手に馴染む出ので、最近は頻繁に使っています。芯を尖らせるのはステッドラーの芯研器などを使いますが、ラフ描き用途なのであまり出番はありません。

ダーレ社(写真のもの)にしても、もうちょっと削りカスの容量が欲しいとか、色々と不満はあります。とは言え、売価1,250円ですから、かなり健闘していると思うんですけどネ。芯先調整ができたり、メンテが可能な設計だったり、机に固定する金具が付属してたりと、日本製品にはない特徴があるので、今のところ使っていますが、できれば2,000〜3,000円台くらいで、もう少し大きいサイズ(中級クラス)のモデルは出ないものか。同社の上級ラインナップは、いきなり6〜8,000円台までジャンプしちゃうので、中クラスが欲しいところです。

まあ、電動鉛筆削りで「美術&デザイン用決定版」みたいのが出れば、もっと鉛筆を使う機会も増えるんでしょうけど、今のところ、そのような製品には巡り会えていません。

作成者 ezura

アナログなツール

コンピュータ・ネットワークのリソース以外を「アナログ」と呼ぶのは、何ともカッコわるいのですが、いまどきは話が通じやすいので、便利に使わせて頂いてます。何か他の適当な呼び方が現れれば、即座に変えますけども。

私事ではありますが、デジタルでの表現領域を広げるうちに、アナログにも高度な技術が求められるようになってきた事が判明しております。道具に拘るスタンスを卑下し、「鉛筆なんざ、トンボの一番安いグレードでも、原画は描けらぁ」と無頓着だった過去を改め、「ちゃんとした道具を使わなければ、デジタルデータに移行した際に、品質がおぼつかない」と自覚し、道具を厳選するようになりました。‥‥まあ、今までのアニメ業界ワークフローなら、今でもトンボの安いグレードで原画は描けるのですが、私の研究している方式ではNGなのです。

鉛筆や消しゴムなど「適した製品」を選出していくにつれ、どうやら「鉛筆削り」に使用目的に耐えるラインナップが存在しない事が解ってきました。デザインはあれこれ様変わりしていますが、肝心の削る性能は私がアニメーターを始めた20数年前と変わっていないようです。鉛筆先端の鋭角度を調整する機構は、電動型ではほとんど無く、ハンドルで削るタイプでも国内メーカーでは「まなびすと」「カラリス」くらいしか見当たりませんでした。

より高性能な「目的を果たせる」道具を探しはじめると、鉛筆削りに限らず、様々な場面で国外メーカーに頼らざる得なくなってきます。色々と物色していると、やはり‥‥という感じで、ドイツのメーカーの出現率が大きくなります。ステッドラー、ファーバーカステルはもちろん、ダーレやM+R、ライツなども選択肢に浮上してきます。

私はできるだけ国産のものを使う主義ではありますが、どうしても空いてしまう穴を埋めるために、ドイツなど国外メーカーを使っています。しかし、自分の机を眺めると、国内製品がドイツ製品にどんどん押されている感はあります。

最近気に入った国内製品はぺんてるの「プラマン」です。名前がアレですが、描き心地は良いです。私はちょっと変わってまして、字はほぼ右手、絵はほぼ左手で書くのですが、たまに左手で字を万年筆で書くと、インクが出にくい事があります。しかしプラマンは角度にかなりの自由度があるので、絵も字も、左利きでも右利きでも、すいすい書けます。筆圧で線の太さも調節できるので、イラストにはもってこいです。しかも値段が安く、リフィルも販売されているので、使い捨てせずに済みます。

近年、アナログツールの重要性をクローズアップしてきたのは、自己研究の成果ゆえです。アナログツールの性能が如実に映像に反映され、今まで体感した事のない作風をユーザに提供する事が、「確実に可能」だと解ってしまったからです。まあ、私の身の振り方にも関わるので、あくまで自己研究の範疇なんですけどネ。

今まで通りに作っていては、どんなにAfter Effectsで効果を上乗せしようが、すぐに限界に到達してしまいます。濃い効果をどんどん追加すれば、「絵が溶ける」いっぽうですし。つまりは、作画部分=エンジンの馬力が変わらないんだから、After Effectsでどんなに頑張っても頭打ちなのです。

「AEで撮影するようになって、作画が楽になって、便利になった」とか言うアニメーターや演出家は、もっと未来を真剣に考えるべきでしょう。タイムシートに「コピペ」とか「パーティクル」などと書いて済ます様な状況は、結局は自分たちの足場を切り崩して脆弱にしていると自覚すべきなんですけど、‥‥こう言うと小五月蝿く聞こえるんだろうなあ。

最近実家のHDテレビで人気アニメ(映画かな?)を見かけましたが、映像効果云々の前に、トレス線の品質がかなりキツくて、今は逆に基礎技術がどんどん低下しているのかも‥‥と驚きました。「絵を描く事の根本」すら揺らぐ様な印象すら感じました。

競合がどんどん「共食い」して力を弱め合い、映像技術も均質化し、キャラ等の作風も均一傾向にどんど突き進めば、私の新しい研究の成果も発揮しやすくなるのですが、‥‥そんな未来で本当に良いのか?と思います。私が30年近く在籍する業界ですしね。

絵を描く事に真正面から向き合う新しい方式には、見合う性能のアナログツールが必須です。「汝、平和を欲するなら、戦いに備えよ」、来るべき新しい戦いに備えて、アナログツールの攻撃力をより強力にしておかねばと思っております。

作成者 ezura
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