2011年4月17日(日)
新しく街をつくることについて
桜もすっかり散ってしまい、枝垂れ桜と花桃の共演もそろそろ、という感じ。
さて表題の内容は、今後の東北地方の復興という極めて難しい問題について語るものではありません。
ごく身近で起きている問題について、です。
都が進めている区画整理事業の地域で、今一件の個人住宅を設計しています。
東北地方の無残な状況とはまったく違いますが、現在計画している敷地周辺の状況も辺り一面建物
が無く、宅地造成のための擁壁だけが無機質に並べられているだけの状態です。
住宅地だったところを区画整理し、遺跡調査等も入ったことからもともとの土地所有者はかなり長
い間仮住まいを強いられて来ましたが、ようやく先が見えてきたところです。
この度の震災による影響で、インフラ整備の工事が遅れることが予想されますが・・・。
用途地域は第一種住居地域なので、ある程度の規模の建物も計画することが可能ですが、ほとんど
の方は専用住宅で、高くても3階建て。私の設計しているクライアントの住宅も、2階建てと1階
建てのボリュームがコートを囲んでいるコの字型プランの小さな建物です。
そんな中、一件だけ中高層のお知らせ看板が立てられたことから「事件」は発生しました。
5階建て15mの賃貸マンションが私の設計している敷地のすぐ南側に出来ることになってしまい
ました。
近隣への住民説明が開催されました。
打合せのあと、なんとなく流れで私も参加。
これから造られようとしている街並みの中で突出して高く景観を害している、日照の問題も心配だ、
せめて4階建て(本音は3階建て)に見直せないか、というのが近隣の要望です。
もともと建築協定もなく、勿論法規に違反する計画ではないので、自由といえば自由です。
古くから顔なじみの方が住んでいる地域でそれなりのコミュニティもできている良い近隣関係だった、
これからも気持ちよく暮らしていきたいし良い街並みにしたい、個人の自由だけを盾に主張せず歩
み寄りましょうといった近隣の方々(約20名)の要望に対し、まったく譲る気がないマンション
の建主。私はマンション側の方が法的におかしな説明をしないかだけをチェックする第三者的立場
として聞いているだけですが、現場にいるとこの攻防はすさまじいです。度々怒号が飛び交います。
「こっちは十分に説明してやっているし、要望も聞いてやっている(聞き入れないけど)。これは
言わばサービスだ。こっちにとっては近隣関係なんかよりも自分の資産運用のほうが百倍重要なん
だからそれを譲る気は最初から無い。だいたい1対20で攻められなきゃならないのは不当だ。
こっちの身にもなってみろ」
とまでは言わない。でも言っている。第三者的に公平に聞いているつもりですが、ちょっとした感
情の高ぶりから漏れてしまう言葉からは、上記のような本音が丸見えで、参加者全員に伝わってし
まっています。
近隣からの要望も、メモで「聞いた」という形だけを残し、二回目の説明会時には、歩み寄りの妥
協案や代替案は一切持ってきませんでした。外構計画も提示する義務がないとし、口頭での説明だ
けです。しかも、電波障害(が出た場合)の調査費用も自分が負担する、とは最後まで言いません
でした。
ところでその計画建物の図面をよく見ると、道路斜線に引っかかっているし(通常の)日影規制に
も適合していない。そこを、斜線制限については天空率を、日影については発散型を適用すること
によってクリアーしている内容です。私以外の参加者は当然素人なので、法的な説明時にはどれだ
けの理解を得られているかは分かりませんが、「あ〜そんなもんなんだ」といったあきらめの雰囲
気が漂います。
正直申し上げると、私も日影規制の「発散型」というものを知りませんでした。(反省反省)
詳しく述べませんが、建築基準法のどの解説書にも出てくる「閉鎖型」の日影規制では、完全にア
ウトの建物も、「発散型」を使うことによってクリアーになってしまうケースがかなりありそうで
す。個人的にはこの規制緩和はやり過ぎだと思いますし、もし逆の立場になった場合も「発散型」
を使って容積率めいいっぱいの建物をクライアントにプレゼンすることはためらうだろうと思います。
そのくらいに違う。緩和しすぎです。天空率についても同じ意見です。
前に一度書きましたが、街並みや景観考える場合、建物の外観や外構計画は、建主だけのものでは
ない、といった公共の意識が大事だと思います。また、新しく地域のコミュニティを確立していき、
超高齢者社会への対応や想定外の災害時に互いに助け合える関係をつくっていかなければならない
でしょう。そういった意識と資本主義的な個人の権利・主張とはなかなか折り合いが難しいケース
のひとつだと感じています。
説明会への参加や対処についてのアドバイスは勿論ノーギャラですが、今後の重要なケーススタディ
として最後まで見守っていきたいと考えています。

