2009年7月7日(火)
「百鳥」ブックエンドより
百鳥の結社誌に書評を書かせていただいている。与えられた本や句集が自分にとっても読みたい本であれば尚更に力が入る。その中から力の入った2冊の紹介です。
土肥あき子さんも、今井聖さんも「増殖する俳句歳時記」の常連執筆者でもあり、こちらでのファンでもあります。
句集「バーベルに月乗せて」
今井聖著
今井聖は俳句界の野党である。と、なぜか思うのである。あの楸邨の愛弟子であるにもかかわらずである。「増殖する俳句歳時記」の金曜日の執筆者である今井氏の毅然とした文章がそう思わせるのだろうか。主宰誌「街」に毎号表明されている脱情趣の「街宣言」も熱く若々しい。
夏逝くや勝利のごとくブラ干され
殺されにゆく雪達磨整列し
レグホンの千の共同不安冬の雲
そして、肉体派だとも思う。英語教師だと聞くが俳句には肉体的な躍動感と労働者にやさしい眼差しがある。
森よりも濡れて半裸の男過ぐ
ジムの窓に映る花火と力瘤
バーベルに月乗せて反る背骨かな
燭吊って降誕祭の路面掘る
黄昏や露草で拭くオイルの手
勿論、仕事場である学園俳句も魅力的である。
助走路に足されて春の土黒し
卒業式さぼりコンドルを見にゆきぬ
今井聖は、「今」という機関車に跳び乗り驀進する。
「伝統」も「前衛」も我が裡にあると信じて。
(香世)
「百鳥」ブックエンドより
句集『夜のぶらんこ』土肥あき子
あの鯨の土肥あき子の第2句集である。現在「増殖する歳時記」の火曜日担当で読者に好評である。あき子の鑑賞は潤沢な美しい文章力で、読者を楽しませ唸らせる。そのあき子の句集「夜のぶらんこ」は、むしろ、からっとした透明感のある現代的な句が続く。感傷的に読むことを拒んでいるらしい。機知があり、明るく楽しく、新しい。
宙吊りにしまふ包丁五月来る
紙風船三つ数えて飽きにけり
熱帯魚水に包んで持ち帰る
にんげんの身体に折目涼新た
ぐったりと引き上げられし水中花
第一句集は、代表句がその表題となり、(水温む鯨が海を選んだ日)は俳句界で、口誦される句のひとつとなっている。この『夜のぶらんこ』もあき子の代表句となるだろう。
夜のぶらんこ都がひとつ足の下
夜の小高い丘の児童公園。興が乗ってきて高く高く漕ぐ。街の灯は煌々と照らされ高速道路のテールランプの赤い線。足の下の都は、夜でなければならない。
あき子は人生を水にたとえ、最後のゴールはいつでも海だと言う。特別な意味のある寄り道をして、海を選ぶ日は確実に来るのである。お奨めの句集。
(香世)

