エムカーヴェー一級建築士事務所 多田将宏のブログ

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2009年7月3日(金)

JIA近畿支部住宅部会セミナー「ある日の村野藤吾」

去る6月25日、INAX大阪ショールーム会議室において、セミナー「ある日の村野藤吾」が行われた。93歳で亡くなるその日まで、生涯現役を貫き通した寡黙な建築家・村野藤吾。その内的世界が綴られた日記と手紙を、祖父の作品と向き合いながら撮り下ろした写真とともに初公開した著書「ある日の村野藤吾」を昨年上梓された、孫である写真家・村野敦子さんを講師に迎え、作品の写真を紹介しながら、祖父である建築家・村野藤吾について語っていただくという趣旨で企画された。当日は、JIA会員、一般あわせて60名の参加で盛会のうちに終った。

第一部は村野さんが今回のために特別に製作された、10分程度のDVDが上映され、著書の中の写真を中心とした村野作品が、静かなBGMの中でゆったりと映し出された。そして著書の出版のきっかけや、ファインダー越しに見える村野作品について、その時何を感じ考えてシャッターを切ったかを語られた。階段の手摺など、人間との接点であるディテールにこだわり抜かれた空間の魅力を見事に捉えたカメラのレンズは、実は建築写真でよく使われる広角ではなく、そのほとんどが人の目に近い標準レンズで撮影されていた。

第二部では、前もって参加者から寄せられた、生前の村野藤吾の人となりについての質問を、住宅部会の八木代表世話人がインタビュー形式で問い、順に答えて頂いた。当日、思いがけず村野さんのお母様と、当時出入されていたお手伝いの方、晩年の村野藤吾と家具製作をされた近創の中村氏が、ゲストとして来て下さり、また違う角度からも貴重な証言を頂いた。

休日は何をしていたか、好きな食べ物、こだわり等、普段着の村野藤吾から、厳しく仕事に対する様子まで、多岐に渡る質問に丁寧に答えて頂いた。特に宝ヶ池プリンスホテルの設計過程を生々しく描写された、亡き父の手記の村野さんによる朗読は、当時の情景がすぐ目の前に思い浮かぶようようで感慨深いものであった。

語られた生前の様子からは、やはり仕事に対しては生涯とても厳しく、飽く無き追求をした、一人の表現者としての建築家像が確かにそこにあった。そしてそれは数々の建築作品を通して、今なお我々に時に厳しく、時に優しく語りかけてくる。

作成者 エムカーヴェー一級建築士事務所 多田将宏 : 2009年7月3日(金) 22:47