2012年2月12日(日)
第263回 産業都市伝説 昭和シェル(国富町)〜石油から太陽電池へ〜
「ぜひともこの(社会人野球の)輪へ多くの企業に入ってきてもらいたいです。」
先週(1月30日)号の日経ビジネス最終面は、市野JABA会長の記事だった。目次を見た途端に驚いて最終ページから開いてしまったのだが、経営者の多くが最も目にするであろう雑誌の、最も目につくページでの会長の熱いメッセージが、どこまで伝わってくれるだろうか。
子供のころから都市対抗のラジオ中継に夢中だったという市野会長が「全鐘紡や別府星野組といった強豪の活躍をよく覚えている」といったところは結構意外だった。
前会長のJR松田会長が「五輪」にばかりこだわり、ことあるごとに野球の五輪復帰が会長の使命であるかのように触れ回っていたことに違和感を感じていただけに、一連の都市対抗をアピールした現会長の言動はありがたいと思う。開催時期を除いては。
その前の週の日経ビジネスのタイトルが「利益より売り上げ」。「不採算の事業を整理し、多くの利益を稼ぐ経営者の方が称賛されます」しかし「売上高は消費者の支持の表れであり、雇用を生み出す原動力でもあります」。
「世の中、目先の利益確保を優先して縮小均衡路線に走る企業が目立ちますが、結果、失業者が増え、消費マインドが低迷しています。」
「企業個々で見れば、利益確保のために正しい選択をしているつもりでも、マクロで見れば、皆で景気の足を引っ張っている」。編集長の視点にも同意する。
誰とは言わないが、従業員を次々と海へと放り投げ、自分たち経営陣だけが生き残って会社を守って株主と共に利益を貪るり、会社再建の立役者として称賛される。しかしながら、会社の大きな使命は雇用だと思う。
地方の税金にしても莫大な法人税と、そこで働く従業員の収めた税金によって支えられ、学校だって市営球場だって作られているのではないか。更に先月「リストラの研究」のタイトル取り上げられたのが石油元売り大手の昭和シェル石油だった。
プロ野球をはじめキャンプ地として話題の南国宮崎。その宮崎県国富町という人口2万人の町でちょうど一年前、世界最大級の太陽電池工場が稼働した。昭和シェル石油の第3工場だ。
東京ドームの8.6倍の面積で、総投資額は約1000億円。2010年12月期の営業利益の約3倍にあたる。既に建設済みの第1、第2工場と合わせると、生産規模は年ギガワット(ギガは10億)。2005年に太陽電池の事業化を決定してから、わずか6年で国内トップのシャープに並び、海外の並み居る強豪と遜色ない生産規模を持ったことになる。
昭和シェル石油は100年以上、石油事業だけを手掛けるモノカルチャーの会社だった。ロイヤル・ダッチ・シェルグループに属しているため、国内行一辺倒。これからは太陽電池でグローバル企業を標榜する。
太陽電池事業を手掛けるのは子会社、ソーラーフロンティア。「先行メーカーと正面から戦うには、中途半端な設備投資では無意味。一気に巨大工場を立ち上げて量産効果を働かせるしかない。」(亀田社長)。事業開始時には100人程度だった太陽電池事業の従業員数は、従業員が5年で1500人を超えた。
逆に2011年9月20日。子会社である東亜石油・京浜製油所扇町工場(川崎市)の原油処理装置を停止した。1931年の解説以来、80年間にわたり操業を続けた大規模製油所。その長い歴史の幕が下りることとなった。
石油から太陽電池へ。今後の課題は技術的なハードルよりも、全く性格の異なる2つの事業をいかに運営するかにある。急激に増えた従業員の連帯感をいかに生み出すかも課題とされるが、こういう企業こそ?


