2010年12月4日(土)
16世紀の3D「サクロモンテ」
昨今流行の3D映像ですが、歴史的事実や、遠い場所の出来事を、目の前に立体的に・・つまり、今そこにあるかの如き姿で見たい!というのは素朴な要求です。
故に、古来、技巧を凝らして絵を描き、彫像を作りました。人物をありのままに描きたいというのが、2Dだと肖像画になり、3Dだと肖像彫刻になるように、ギリシャ以来、優れた芸術のあった西欧諸国に、キリスト教が広まると、いかに偶像を禁止しても、人々は、素直に、キリストの姿や、その生涯のドラマを、目の当たりに見たいと願います。
その素朴な欲求を、聖職者の側も布教活動に利用し、ゆえに華麗なるキリスト教美術が生まれるわけですが、モザイク画や壁画から発展し、ルネッサンスを経て、極度に芸術がドラマチックになってくると、より迫力の臨場感を・・と求めるように、現代の映画のCG処理や、ついには3D映像に行き着いたように、宗教画も立体化してきます。
その代表がサクロモンテ・・つまり「聖なる山」です。エルサレムに行けない巡礼が、あちらの聖地を、地元に復元した場所に詣でるという発想から始まったのですが、そこの礼拝堂を順次尋ねると、キリストの一生を立体映像で見ることが出来る場所になったのですね。
有名なのは、イタリアのヴァラッロにあるサクロモンテです。
勿論、クライマックスは受難劇。逮捕から鞭打ち、荊の冠、十字架を担いでの死出の道行き、そして磔です。
これらを、絵画と、立体彫像によってその境目が分からなくするほどの技巧でもってこしらえた、まさに飛び出す壁画・・3D大迫力画面です。写真で見る限り、当初、絵の具の剥落がなければ、ぱっと見には、何処までが壁画で、どこからが彫像かわからなかったのではないでしょうか。
そうなんですね・・「ヴァラッロのサクロモンテ」という本を手にすることが出来まして、サクロモンテ研究の一端にふれたわけで、いかに多くの人々が、この立体映像を、何年もかかって作ったかがわかります。教科書に出てくるような画家ではないけれど、それ相当の画力のある人たちが結集して、ミラノの大司教などが後ろ盾となって推進したのですね。
まるで、その場にいるかのような、迫力なキリストの受難劇です。髪の毛はホンモノを使い、目にはガラスが入り、一部、布の衣裳を着せてありますし、等身大の彩色彫像は、当時の人たちには、まるで本当にそこに血を流すキリスト様がいるように見えたのではないでしょうか。十字架降下の後には、透明の柩に入ったキリストの死体(まだ、蘇る前です)が安置してある写真など、血まみれで、髪が乱れ、本当にブキミです。
それにしても、ここまでくると、なにやら「芸術」ではないように見えるのですが、これは、宗教に奉仕する・・という意味では、キリスト教芸術のゆきつくさきなのかも。そう思えば、映画のメル・ギブソンの「パッション」など、その延長上にあるかもしれませんね。

