Dr. Finance's Insights の Blog

ファイナンス博士の洞察 ブログへようこそ

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Tuesday, January 20, 2009

Darrell Duffie (その 2)

あれから10数年、Duffieは、今や、次期.アメリカ・ファイナンス学会の会長。デリバティブ (Derivative) 分野、特に、クレジット・デリバティブでは誰も否定しようがない世界の第一人者。

この小さなホテルの会議室の外では、100を超える経済学関係の学会で、それぞれの専門分野の研究者が論文を発表し活発に議論しているだろう。ただ、この部屋の空気は、熱気の中にも、何か落ち着かない雰囲気がある。

Duffieが司会しているこのセッションは、社会経済学会(ASE)の呼びかけにファイナンス学会(AFA)が応えて実現したという。主題は、クレジット・デリバティブの乱用に端を発したという世界金融危機に直面し、デリバティブ取引の規制についてだ。

パネル・ディスカッションの形式で、最初は、もう1世紀は金融市場を見つめているだろうかと思われるボストン大学の先生が金融界の歴史を話した。次は、社会経済学の先生だったろうか。彼は、近代経済学者というより、社会科学者のようだった。最後は実務家で、投資銀行家として今回、問題になった金融商品にも係わったそうだ。

Duffieは、司会だったのであまりしゃべる機会はなかったが、アメリカ議会の求めに応じて、金融派生商品の規制について意見書を送ったと言っていた。(彼のホーム・ページに行けばダウンロードできる。)

彼らは、口々に、今回のことは embarrassing だと言っていた。ただ、金融やマクロ経済の大きな津波、最先端の金融派生商品にわたる、すべての分野に精通した研究者はいないといった印象だった。ここにいなければ世界のどこを探してもいないだろう。

そのあと、参加者からに質疑応答があったが、それほど積極的な発言もなかった。みな、同時代の出来事を現在進行形として見つめているようだった。

Duffie は、誠実だったからこのような臨時のセッションを設けたのだと思う。彼の過去の研究を見れば、彼の能力をもってしても、これほど広汎な社会経済的な津波を、現在時点では分析できないことがわかる。

ただ、彼は、彼の誠実さと、能力でそれに立ち向かうと思う。さらに、彼は、すでにそれを分析できる研究者たちを育ててきている。この層の厚みは、やはりここが経済研究の最先端だという事実を思い起こさせる。

あるアメリカの学者はこう言っていた、「進歩はいつもいいものだ」と。僕もそう思う。「退化よりは、進歩はいつもいいものだ。」 限界のある人間だからこそ進歩を求める、これは人間の性かもしれないが、今はそれしか光の方向が見えない。

作成者 takeda_fin : Monday, January 26, 2009 23:34

Sunday, January 11, 2009

Darrell Duffie (その 1)

Darrell Duffie、
ファイナンスの研究者なら知らぬ者はいない"Dynamic Asset Pricing Theory"の著者。

彼と最初に会ったのはもう10数年も前になる。Carnegie Mellon University の数学科 Mathematical Finance Division が、彼をセミナーに招待した。その時の講演内容は確か、Corporate Bond のプライシングについてだったと思う。今考えれば Credit Derivatives の初期の研究だったと思う。中くらいのサイズの教室が満員になるほど研究者が詰めかけていた。Financial Economics の先生も何人かいた。

その時は、まだ、Merton, (Black,) and Scholes が、ノーベル賞をもらう数年前で、ビジネススクールではなく数学科が彼を招待したことにも、金融工学者と経済学者の対立が反映していたように思える。

そのセミナーの後、立食会の時、彼に少し前に発表された論文について質問した。Duffieは、その質問にたちどころに答えた。日本の一部の学問的権威者のような権威主義的なところはみじんもなく、彼の知るところを親切に答えてくれた。2言3言交わしただけだったが彼の受け答えは気さくで、誠意があったと思う。

このような素朴で、勤勉な性格は、Mathematical Finance の Steve Shreve にも感じられた。世間で言われるような「金と欲にまみれた金融工学」の研究者は、その多くは勤勉で誠実なのだと思う。あれほど高いレベルの数学と格闘するには、小手先の態度では通用しないのだ。

そして、十数年の時を経て Duffie は、いま目の前にいる。あの時の教室より少し狭いホテルの小さな会議室。100脚ほど置かれた椅子はすでに埋まっていて立ち見の人たちや、部屋に入れない人たちが廊下にあふれているようだった。僕は少し早く来たので部屋の真ん中の席に座れた。前を見るとなぜか Duffie と目が合ってしまう。

Duffieは、相変わらず少年のような端正な顔立ちに、好奇心を体いっぱいに詰め込んだような笑顔をしていた。

何度も目が合うので、不思議な気がした。Duffieと直接会ったのはあれ以来なかったが、彼ほどの頭脳なら10数年まえに少し話した人物の顔まで覚えていることもありうるような気もした。

作成者 takeda_fin : Thursday, January 22, 2009 01:54
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