指揮者柳澤寿男のブログ

バルカン室内管弦楽団音楽監督・コソヴォフィル首席指揮者として活躍する柳澤寿男のブログ

2011年7月10日(日)

「ベオグラードへ!!」

2011年7月1日から9日まで旅をしたバルカン半島
(ベオグラード、プリシュティナ、ティラナ)を
以下のブログ「ベオグラードへ」に纏めてみました。
お時間のあるときにお目にとまれば幸いです!
7月1日から順に下から上のブログへお読みください。

 ―目次―

1)原点!!
2)美しき青きドナウの流れ
3)ドナウの辿り着く街1
4)ドナウの辿り着く街2
5)不思議な調和
6)5000億ディナール札
7)変身・変心
8)バキさんの橋
9)仏陀!!
10)スラヴ行進曲
11)○と×
12)ロマ民族を訪ねて
13)ロマの少年音楽家1
14)ロマの少年音楽家2
15)懐疑心の目
16)大いなる旅路の終わりに

作成者 柳澤寿男 : 2011年7月14日(木) 00:31

2011年7月8日(金)

「大いなる旅路の終点に」−ベオグラード

早朝4時半。ティラナ発、ウィーン行きのオーストリア航空に乗り込むと、例の美しき青きドナウがBGMとして出迎えてくれた。独特のウィーン訛りを身に纏った音楽たちは、いささかアルバニアには似合わないソフィスティケイトされすぎた音楽のようにさえ思えた。機内のシートに腰を下ろすと、不思議と訪れた都市のことが、次々と頭を過ぎった。ベオグラードの空爆され崩れかけた国防省、コソボのバキさんの身内が亡くなった橋のこと、ティラナのロマの人々の視線や瓦礫の中での生活、戦後復興の中で建設に勢いを見せる街たち。それぞれが目を閉じた瞼に静かに浮かんでは消えていった。旅を続けてきた、私ともう一人の日本のテレビの取材の男性は、出発地ウィーンに戻り、大いなる旅の閉幕に一杯やろうじゃないかということになった。といっても酒がまるで飲めない我々の向かった先は朝のザッハーカフェであった。バルカンで様々な光景を目の当たりに戻ってきた、ウィーンで見る風景が何もかも10日前に来た時と違って見えたのは傑作だった。ザッハトルテとアールグレーティーが目の前に運ばれ、ルネッサンス
様式のオペラ座を眺めながらゆっくりと味わう。

作成者 柳澤寿男 : 2011年7月25日(月) 22:40

2011年7月7日(木)

「懐疑心の目」−ベオグラードへ

日本のテレビ番組の取材者の希望でさらにとあるロマの集落を訪れることとなった。ティラナ市から20分ほど離れた路地のさらに路地を進み2台のUNDPの車両が集落に辿り着く。先ほどのロマのコミュニティとは明らかに違った光景が目の前には広がっていた。UNDP職員がここは以前UNDPがプロジェクトを手掛けていたが、と、そのあとの言葉は聞き取れなくなった。しかしすぐにそれがどういうことであるかが分かった。おびただしいゴミや割れたレンガの散乱する広大な広場にバラック小屋がいくつも立ち並んでいた。40世帯の人々が住んでいるという。私たちを警戒する目がこちらに集まり、広場の奥へ進むとなんとかお互いに挨拶を交わすくらいのことはできたかのように思う。上半身裸の男たち、何も着ていない子供、片目の潰れた若い女性。彼らは物乞いやゴミを売って生活をしているのだと言っていた。彼らの支援は急を要している。何が不足しているかって、何もかもがない。水もなければトイレもないという。バラック小屋の向こうに立派なマンションが立ち並ぶ。このマンションはなんと彼らのために建てられたものだという。しかし、政府の条件として何らかの収入があるものでないと入居できないのだそうだ。私は一応に物乞いは収入には?と半分言いかけたが、当然のようにUNDP職員は首を横に振った。UNDP職員は、これは本当に本当に大きな問題なのだ。と何度となく私に言い、虚しくマンションを見上げた。そしてこの40世帯の誰も未だマンションに入居していない。誰もいない空室のマンションが社会のジレンマのように意味もなく建っていた。さて、ティラナに帰ろう。誰かが
つぶやいた。。。

作成者 柳澤寿男 : 2011年7月25日(月) 22:49

「ロマの少年音楽家2」−ベオグラードへ

別のロマコミュニティを訪れ、小さな学校のような建物で5人の少年たちと待ち合わせをした。15歳程度の少年たちはそれぞれにクラリネットやバイオリン、アコーディオン、それにタラブカというバルカンではおなじみの民族打楽器を持っている。全員と握手をして音楽を聴かせてもらうことにした。真ん中に座っている楽器を持たない少年が手際よく合図をすると、突然勢いよく歌いだし、ロマの民族音楽が始まった。アコーディオンの少年以外はまるで譜面が読めないらしいが、驚くことに合奏として成りたっている。まず歌声が透明でプロフェッショナルといっていいほどの美声だ。クラリネットやバイオリンの合いの手もタラブカのリズムも理屈のないまったく自然な生きた音楽だった。曲は何の前触れもなく突然に始まってこれといった終わりを感じさせるフレーズもなくいきなり終わる。どうやら始まり方とか終わり方とかにまったく興味がないようだ。しばらくしてUNDPスタッフも私も少しずつ足や身体が動いていくことに気が付いていた。心が踊りだすビートだった。どうやらロマ語で色恋ものの内容らしいが、それぞれ2分ぐらいの曲を5曲ほど聴かせてもらったところで、もっと聴かせてくれというと少し困った顔をした。もう持ち曲がないのだろうか?楽器を持たない少年がなにか打ち合わせ、いままでのものとは違ったリズムの曲を演奏し始めた。これもまた良い。曲が終わって曲のタイトルを聞くとあなたのために考えながら即興で演奏したといってくれた。ロマの音楽はその瞬間に身体から出てくる感情にまったく逆らわない、100%直球勝負という曲ばかりだった。面白くなって、どうやってかは分からないが、ロマの少年5人全員とバルカン室内管弦楽団とを共演させようと考えた。しかしいくつかの疑問もある。まずこれらの曲たちは2度目に演奏した時まるで違うものになっている可能性がある。また、何よりもロマは定住しない民族で演奏会を待たずにどこかへ引っ越してしまう可能性もあるのだ。実際に今日約束していたロマの少年もひとり、2、3日前にどこかへ行ってしまった。

作成者 柳澤寿男 : 2011年7月25日(月) 23:00

「ロマの少年音楽家1」−ベオグラードへ

どのような人たちなのか、まるで想像もつかないままUNDPの車がフシュクルヤに到着する。私の周りにはあっという間にどこからか相当数の子供たちが集まり、珍しそうに私を眺めると口々にカラテ、カラテと言って喜んでいた。この地でUNDPが行っている、路地の舗装や壁の修復などを見せてもらいながら、何軒かのお宅を拝見させていただいた。小奇麗に片付けられた石を積み上げた家。とうもろこしやカボチャを自家栽培し、籠を作ってひとつ2ドル程度で売って生活しているようだ。私達が移動するとその度に民族大移動のように面白がって子供たちが付いてくる。時間が経ち子供たちと言葉でないジェスチャーぐらいのコミュニケーションができ始めると、それ相応に子供たちも大人たちもそれぞれにきちんとした服を着て、きちんとしたサンダルを履いていることに気が付いた。庭には井戸のようなものがあり自分たちでチューブを地面に刺し作ったのだと言っていた。彼らはアルバニア語を喋っているようでUNDPの職員が通訳に入る。庭に集まった子供たちが、私たちのために一曲歌ってくれることになった。数十人といえる子供たちが所せましと庭に押しかけ歌い始めた。まったくと言っていいほど音程というものはないが、上から下へ下降するメロディーが何度となく続く曲を笑顔いっぱいに歌ってくれた。私がどんな意味の歌を歌ってくれたんだい?と聞くと、彼らの中で決めているロマの日5月6日を祝う曲で、みんな集まっておいでというような歌をロマ語で歌ってくれたらしい。きちんとした教育を受けていない彼らはもちろん楽譜を読むこともできない。代々歌い継がれている音楽のようで、ロマ人はみんな知っている歌だといっていた。子供たちは私のカメラに興味を持ち、ニーフォト(写真、1枚)とアルバニア語で私に群がった。彼らに別れを告げようとすると、何やら皆同じことを言おうとジェスチャーを繰り返すがなにを言いたいのか全く分からない。またカラテか?と返しても返事がない。暫くして、どこからどうやって
知ったか分からないが、それが津波のことだと気が付き、私が日本から来たのを気にして心配してくれているようだった。私は熱くなって心配してくれてありがとうと言うような内容を伝えると子供たちに別れを告げ、フシュクルヤを離れた。

作成者 柳澤寿男 : 2011年7月25日(月) 23:06

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